ついったログ | ナノ
菅原孝支の刀は無名の刀匠が打ったものだが、持ち主の手入れの甲斐あってかよく斬れる立派な刀だった。切れ味が悪くなれば研いで刃こぼれしたら鍛え直してまた使う。大切に使われていたが、やはり限界というものはあって、ついに刃が折れてしまった。鍛冶屋の者もこれは修繕できないと諦めました。


変わりの刀を見繕い、愛刀は鍛冶屋が引き取ったが、この刀に魂が宿るのは早かった。捨てられ持ち主と離れたらこともあるのだろうが、何よりも大切にされていたから。感情を得てヒトの体を得て、刃折れの剣は一人の女になった。女がはじめに思ったことは持ち主に、菅原さんに会いたい。会いたい。


「元は刃折れの剣とは言え、今お前は女だ。持ち主の妻子を見りゃあ何か思うところもあるだろうよ」

それでもお前は、本当に菅原に会いたいか? 念を押すように鍛冶屋の店主は言った。わたしは頷いて、地図を書いてもらい菅原さんに会いに行く。家の前まで来て扉の開く音に思わず身を隠した。彼の腰には、


見たくなかった。分かっていたけど、見たくなかった。彼の腰には真新しい刀、その隣には一人の女と子供。幸せそうに家を出たの。それを見たら、何でかな、分かってたのに、涙が止まらなくて、わたし、捨てられたんだ。使ってもらえないんだ。もう彼の役に立て、ないの? そんな、わたし、まだ使えるよ?


ほらわたしまだこんなに働けるよだからわたしを使ってそんな脆弱な刀ではあなたの役に立たないわねぇほら見てこの女も斬れるあの子供も斬れるあなたの刀だって簡単に折れるわたしの方があれなんかより役に立つから、だから、そばに、おいてよぉ。
付喪神とは名ばかりの、持ち主にすら仇なす邪神です


その女は俺がかつて愛用していた刀だと名乗った。また会えて嬉しいと言った。新しい子の使い勝手はどう?と首を傾げた。自分はまだ斬れると子供を斬った。自分はまだ働けると妻の首を落とした。自分の方が相応しいと刀を壊された。そばにおいてほしいと懇願された。刃折れの刀を振りかざしながら。


夜の町を女が一人、鼻歌混じりに歩いている。美しい容姿に似合わぬ刀を腰に差して。赤い色が艶やかな着物を着て。上機嫌に袖を揺らしながら。女の着物の袂から、ゴロリと転がり落ちたそれは一体何だったのでしょうね。ああ、それにしても、わたしの着物、こんな色だったかしら。


別エンド

殺される、と思った時、彼女にかかる液体。瞬間炎が上がった。

「…だい、ち、」
「スガ! 大丈夫か」
「…ああ、平気、なんでもない」

油を浴びせられた彼女はごうごうと音を立てる炎の中でもがいた。

「お前は、」

伸ばした手は彼女に届く前に、彼女が果てた。炎はまだ燃えている。
時間が経って、炎が収まった。その中から出てきたのは真っ黒な炭と化した刃折れの刀。大事にして、大事だったのに、折れちゃって、俺の、せいで。

「ごめん、な」

お前にはたくさん助けられたのに。

「今まで、ありがとう」

だから、もう休んでいいんだよ
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