ついったログ | ナノ
及川君は格好いい、バレーの知識は無いけれどすごい人なんだなぁと思う。だからわたしみたいな凡人は話しかける機会はなくて遠くから見るだけ。烏滸がましいけれど仲良くなりたいなんて。接点などないけど。なのに。この状況はなに? 背中に壁、目の前に及川君。逃道を塞ぐように顔の横に置かれた彼の手


「ずっと気になってたんだけど」
「はっ、はい」
「君、俺のこと嫌い?」
「え?」
「おかしいな。俺としちゃあ好かれるようにあれこれ手を尽くしたのにさ」
「え」
「目も合わせてくれないし。今だって。ねえ、俺が怖い? 嫌い? 逃げたい? 俺、お前のこと好きなんだけど。どうかな」
「わ、わたしも及川君が」


ヒロインは及川さんが好きで、及川さんも実は彼女のことが好き。これはとてもすごいことで、奇跡で、本当にすごいことだった。良く言えば真面目、悪く言えば地味な彼女が、両思いだったなんて。ああ、ああ、今ほど生きていて良かったと思ったことはありません。あんな素敵な人の恋人になれるなんて!


「及川さんに彼女が出来たんだって!」
「えーうそ!」
「この前女の子と歩いてたもん」
「それ本当に彼女さんなのかなぁ」
「だって手繋いでたし」
「そっか…彼女かー」
「え、何? あんた及川さん好きだったの!?」
「アイドル的な感じね。見てて幸せ。彼女さんいいなぁ」
「そう、なんだけど。何か、」


手を繋いで仲睦まじく歩いているはずなのに、彼氏彼女のはずなのに、恋人同士のはずなのに、どこか冷えきった空気が取り巻いていた。見間違いでも勘違いでもなくて、


喉から手が出るほどほしくてほしくて仕方なかった。どんな卑劣な手段を使っても手に入れたかった。でも変なんだ。自分のモノにした途端興味が失せちゃった。これっぽっちも関心が無くなって、どうでもよくなって、あんなにほしかったのに今ではもうゴミ同然の価値しかないだからもういらないいらないよ


あの子は優しい。人当たりが良くて、一緒にいると気が楽というのか、とても落ち着ける。隣はすごく居心地が良かった。そんな彼女との接点は同じクラスというだけ。

彼女は派手さは無いが淑やかだと秘かに人気があった。俺以外を選ばないよう男を遠ざけた。親しく話す男はいなくなった。あとは、簡単


手に入れるまでを目当てに頑張った及川さんはその後のことなんて考えていません。今が楽しければそれでもいい。手に入れたからそれでおしまい。目標は達成されたからこれで終了。その後のことなんか、知りはしないのです。あとはどうぞ、ご自由に
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