あの子がほしい | ナノ

朝、ベッドをフェイタンに取られたわたしはソファーで目を覚まし身支度を整えた。二人分の朝食を用意しテーブルに並べる。料理が冷めないうちにフェイタンを起こしに行かなくては。キィ、と不快な音を立てて扉が開かれ部屋の中へ足を踏み入れた。ベッドでは彼がぐっすりと眠っていた。寝苦しかったのか髑髏のマスクは外していた。
ちくしょう、本当ならそのフカフカのベッドはわたしが使っているはずだったのに。ずっとソファーで寝ているせいか体中が痛い。ぐっすり眠っている彼が恨めしい。

「フェイターン、朝ですよー」
「……ん」

布団を捲りあげて起こす。寒いのか布団を求めて手が空中を彷徨う。「ほら、起きて!」とその手を握り引っ張り上げると眉間に皺をよせ盛大な溜息をついて渋々、といったふうに起き上がる。そのまま引っ張ってテーブルまで引きずるように連れて行き座らせる。朝からの重労働にさすがに疲れた。自分も椅子に座りテレビを点けると、アトリー家というどこの金持だか知らないが珍しい宝石を買い取ったとか、ニュースで話題を呼んでいた。
薔薇の形にカットされた透明感のある赤い石。手のひらサイズと大きく、圧倒的な存在感を放っていた。

「あ、この宝石綺麗だね」
「欲しけりゃ盗てくるといいね」
「フェイタンも行かない?」
「面倒よ」

そんな会話をしながらコーヒーに砂糖をたっぷり入れる。その様子を見ていたフェイタンは眉をひそめて「甘過ぎね」とボソリと呟く。彼はいつもブラックで飲んでいるので砂糖やミルクを入れるのが理解できないのだろう。むしろわたしからしたらよくそんな苦いのを飲めるね、と言いたい。
朝食を食べていると携帯が二つ同時に鳴り出した。わたしはかじっていたトーストを皿に置き確認するとメールが来ていた。シャルナークからだった。

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