あの子がほしい | ナノ

ゲームに負けた。それすなわちわたしの死を意味することだった。負けた方は勝った方のいうことを何でも聞くという条件でわたしは負けた。フラグ立ちまくり。拷問の実験台にでもなれって言われたらどうしよう。痛いの苦手なんだよなあ。フェイタンに命令を出されるまで余生を楽しむべくふらりと立ち上がると袖を引かれソファーに戻される。

「どこ行くか? ワタシまだ言うこと聞いてもらてないね」
「今なの? 今度じゃなくてい今なの?」
「今ね」

まじすか。
どんなエグイ命令を出されても何とかできるように最悪の状況をすぐさま想像し色んな方面へ警戒をしているとフェイタンの命令は至極簡単なことだった。あまりに簡単すぎて聞き直してしまうほどに。

「、え?」
「だから、うつ伏せになるよ」

ここで、と言わんばかりにソファーを指さし彼は立ち上がる。待った、待った待った。ちょっと整理しようか。ソファーにうつ伏せになれ、と? 何故? 意図が全く読めない。何をする気だ。まさかわたしの背中を踏みつける気か。そんなバカな。「ささとしろ」とあの鋭い眼光で睨まれてしまい、思考を停止させ言われた通りソファーにうつ伏せに寝転んだ。置いてあったクッションを抱きしめて恐怖を和らげる。
ギシ、と軋む音がすると背中に感じる重み。彼がわたしに跨っていた。ひんやりと冷たい指が首に当たってくすぐったい。身を捩ると「動くな」と一喝。わたしのうなじにかかる髪をかき上げた。冷たい手が触れるたびにびくりと動いてしまい、見えていないけどきっと眉間の皺が大変なことになっているだろう。
上で彼が動いた気配を感じるとほぼ同時に何かが皮膚に食い込むような、そんな痛みを感じた。擬音で言うなら、がぶり、だろうか。蜘蛛の刺青が掘られているうなじに噛み付かれた。今度は温かいものが首をつたってきた。出血するほど強く噛んだのか。がじがじと噛まれあまりの痛さに声を上げた。

「ちょ、痛い! 痛いって!」

無理矢理にも起き上ればフェイタンはわたしの上から降りて口の端についた血をぺろりと舐めた。

「…鉄の味」
「そりゃあ出血しましたからね」

出血を止めるために患部を手で押さえると手のひらはべっとりと赤くなった。洗わなきゃ、ティッシュで血をふき取り、大きめの絆創膏を用意して自分では上手く貼れなかったのでフェイタンに頼み貼ってもらう。ようやく出血が止まった。
フェイタンは昔から噛み癖があった。骨が砕けるのではないかと思うくらい強く手のひらを噛んだり、肉を引き千切らんばかりに噛み付いてくる。その行動の理由は分からないが、とにかく痛い。
子供の頃に噛まれた腕の傷もまだ、刀傷みたいに残っているくらい。

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