あの子がほしい | ナノ

わたしの家にフェイタンが住み着いて早や三日。もともと必要最低限のものしか置いていなかった家に彼は飽きたのかふらりと姿を消した。突然やってきては突然いなくなる、まるで猫のようだ。きっと彼なら黒猫だろう。
コーヒーを淹れてソファーに座りテレビをつけ番組を見ていると玄関の扉の開く音がした。誰だろう。警戒しながら気配を消して玄関に向かうとフェイタンが小脇に箱を抱えていた。見るとゲーム機のようでテレビに繋いでプレイするタイプだった。彼が「ただいまね」なんて言うからうっかりつられて「おかえり」なんて言ってしまった。ハッとして口元を手で覆う。彼はわたしに目もくれず早くゲームで遊びたいのかそそくさとリビングに向かいコードを繋ぎ始めた。BGMに明るい音楽が響く。プレイしていたのはまさかのグロテスク系のシューティングだった。
床に散らばった包装紙や箱を片していると、彼が使っているほかにもう一つ、コントローラーがあった。あれ、と疑問に思っているとフェイタンが手を止めた。

「いしょにやるか?」
「え、いいの?」
「やらないならいいよ」

やりたい!
コントローラーを用意してゲーム機に繋ぎ、フェイタンと並んでソファーに座りゲームを楽しんだ。わたしとフェイタンの対戦で画面に次々と現れるゾンビを撃ち倒していくもので、ゲームのBGMと銃声と時々わたしの悲鳴がした。しばらくやっていると時間切れとなり画面にwinとloseの文字。得点は僅差でわたしは負けた。

「はは、アリシアがワタシに勝とうなんて百年早いよ」
「もう一回、もう一回お願いします!」
「負けた方がなんでも言うこと聞くならいいよ」
「、絶対勝つから」

負けるわけにはいかなくなった。よし、と意気込んでゲームに挑むと鬼畜フェイタンはさっきのは手抜きだと言わんばかりに銃を撃ちまくり、二倍以上の差がつき惨敗した。
ワタシの勝ちね。
目を細めた彼に死亡フラグが立った気がした。

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