あの子がほしい | ナノ

長い廊下を歩く。足音が二つ反響して耳に入った。わたしも彼も無言だ。まだ口の中が鉄錆の味がして気持ち悪い。余りに静かな空間に耐えきれず、苦し紛れに会話をすることにした。
ね、骨のある奴はいた? 彼の顔を覗き込むようにして聞いてみると眉間に皺をよせ、ちっと舌打ち。怖い。

「数が多いだけの雑魚ばかりだたよ」
「そっか」
「……」
「……」

また、沈黙。何故、彼は機嫌が悪いのだろうか。弱い奴ばかりだったからだろうか。フェイタンがイルミと戦いたかったのか。これは前者だろう。じゃあ何故わたしに当たるのか。
フェイタン怖い、フェイタン怖いよ! と内心びくびくしながら次の話題を探していると彼の方が、あ、と声を漏らした。ポケットの中をまさぐり何かを掴んで様な形の手が覗く。「ん」と差し出された手を見て、わたしは驚き声を上げた。彼の手には、今回の目的である薔薇の宝石。フェイタンの手が小さいからなのだろうけど、テレビで見たものよりも大きく見える。そして本物はやはり美しく輝いていて、とっても綺麗だ。

「やるね」
「…え、」
「アリシアこれ欲しいて言てたね」

だからやる。ぶっきらぼうに差し出されたそれに「ありがとうっ!」と心からのお礼を。
いつもいつも盗られるばかりだったのに、飛行船の中といい今回といい、フェイタンがわたしに優しい。どうしたのだろう、本当に。

「あ、でもシャルナークになんて言おう。あいつが欲しいから仕事に誘ったんだよねきっと」
「知らないよ」

そんなあ。せめて言い訳くらい一緒に考えてよ。

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