飛行船、ツインのスイートルーム。フェイタンがここを使っていた人間から強奪した。おかげで一番いい部屋に止まっての移動となっている。剛田主義者の取り巻きはこういう時に得をする。言い方は悪いが力の有る者のおこぼれにありつくことができるのだ。窓から眺めた景色は綺麗だった。 ふははは、まるで人がゴミのようだ。 なんてふざけてみるとフェイタンもわたしをゴミを見るような目で見ていた。 「ちょ、冗談だって。その目止めて」 「お前、バカか? ああ、アリシアは昔からバカだたね」 口を開けば嫌味。ムカつく。その人を小馬鹿にしたような目。でも今のはわたしが完全にバカだった。自覚はしてたさ、それだけマシじゃない? *** 飛行船はゆっくりと目的地を目指して進み、もう日が沈みかけている。それこそ、窓から眺めると綺麗でずっと見ていられるくらいだった。普段と目線が違うだけでこんなにも変わるものなのか。 フェイタンはシャワーを浴びていて水の流れる音が響く。数分後には水音も止まりシャワールームから彼は出てきた。窓から視線を移すと彼は黒いマントを脱いでおり、半裸。首には備え付けのタオルが掛けられていた。髪からは水が滴り落ちている。普段露出の少ない人が脱いでいると何かじっと見てしまうのはきっと悪くない。不機嫌そうに睨まれ我に返る。 「何見てるか」 「っあ、ごめん。つい。……って言うか、フェイタンって意外と筋肉質だね」 「ハッ、お前と違て贅肉なんかついてないよ」 「わたしだってついてないよ!」 と、信じたい! きっとついてないって。だって太らないようお菓子だって控えてるし? 食べ過ぎないようにしてるし? ヘルシーなもの食べてるし? 最近運動不足なのが気になるけど? それでも! モデル体型とまではいかなくったって痩せてる方だし! でも運動不足…。それも今日解消するつもりだし? 特に意味があるわけでもないが思考が同じところをぐるぐると回る。答えが出るわけでもないのに。一人で頭を抱えたわたしを見てフェイタンは、絶滅危惧種を見るような、憐れんだ視線を送っていた。 それが余計に悲しかった。 |