さしずめ原因は先の全国大会での誤解を解き、更に深まった師弟の絆か。
自分のことを心配してくれていた吹雪に、淡い心を寄せていた雪村は喜び、
さらに強まった想いのあまり、言動に拍車をかけているのだ。


「いいよ、部室で待っててね
じゃあみんな、今日の部活はここまで
僕は少しDFたちと話があるから、各自気をつけて帰ってね」


DF以外のサッカー部員を集合させ、軽く明日の連絡をして部活を終了させる。

「お疲れ様でした!」「さよーならー!」という声に手を振り、DFたちのいるゴール前に行こうとしたところで、吹雪は「あのっ!」という声に呼び止められた。


「雪村、どうしたの?」

「お、俺も、話に交ぜてほしいです!」

「いいけど…外は寒いし、話も少しだけだから部室で待ってた方が…」

「俺なら大丈夫です!その…むしろ吹雪先輩と一緒にいる時間が減らされる方が辛いですから」

そう爽やかに口説く雪村を、吹雪は苦笑しながら軽くあしらい、吹雪は足早にDFたちのもとへ向かった。





「あ、コーチ!……と雪村」

「真狩、今なんかあからさまに"うわぁ…"って顔しやがったな?」

「……別に」

「俺の目が誤魔化せるとでも思ったか!制裁だくらえっ!」

「ぐぁ…や、やめろ…!」


雪村が容赦なく真狩の顔にマフラーを巻き付けていく光景に、近くにいたDFたちはいつの間にか吹雪の近くへと自主避難して来ていた。


「(もう…守備の要である真狩が話にいないんじゃ、話にならないんだけどなぁ…)」

とは言ったものの、はみ出し者と言われたあの雪村が仲間と親しくしていることは喜ばしいことで。
雪村の容赦ない制裁から必死に助けを求めている真狩の姿も、今の吹雪には微笑ましい仲間との戯れとしか映らなかった。





「毎日お疲れ様ですね、吹雪コーチ」

声を掛けられた方を振り向くと、横にはやれやれといった風に雪村たちを見る白咲がいた。


「白咲ぃ…お疲れなのがわかってるなら、コーチに代わって雪村の相手してあげてよ」

「そんなことしたら俺が半殺しされるんでお断りします」

「それは残念だなぁ」

「フッ……」


フィフスセクターから送り込まれた当初から比べ、表情が柔らかくなった白咲を見て吹雪は安心した。

「白咲、今サッカーは楽しいかい?」

「……つまらなくはない、です」

「そう…なら良かった」


これから頑張っていこうね、吹雪が微笑むと、白咲は照れたようにそっぽを向いた。






「…おい白咲、何吹雪コーチにデレデレしてんだよ」

低くドスの効いた声に振り返ると、真狩への制裁(?)を終えた雪村が白咲を睨み付けていた。
その後ろでは激闘を繰り広げた真狩が、他のDFたちに介抱されているのが見える。


白咲は雪村の視線をものともせず、逆に挑発するように雪村を見やった。

「お前こそ、吹雪コーチにベタベタし過ぎだ
特訓だか何だか知らないが、お前のために時間を割いてくれる吹雪コーチのことを少しは考えろ」

「んだと…!」

「ちょっと2人とも!喧嘩するなら部活終わってからにしてよね!」

険悪なムードにいたたまれなくなり、白咲と雪村の間に入る。
二人とも腑に落ちなさそうだが、ここは強引にいかなければならない。


吹雪は左腕を白咲の腕と組み、右手で雪村の首根っこを掴んで部室へと移動した。

中学生とはいえ大柄な白咲までもズルズルと引っ張っていくコーチの姿に、サッカー部員たちは「流石は熊殺し…」と
尊敬と少しの畏怖の念を覚えるのであった。




コーチ、ストライカーとキーパーの険悪な雰囲気に耐える自信がありません!



「はあ…(やっぱりアフロディ君みたいに綺麗にチームをまとめられないなぁ…
今度木戸川にアドバイスでも貰いに行こうかな…)」

「…吹雪コーチと腕組み、羨ましいだろ」

「特訓のとき2人きりだから羨ましくなんてねぇよ」

「「………(コイツ気にくわねぇ…!)」」


二人の対立に頭を悩ませる吹雪の気も知らず、2人はバチバチと火花を散らしていた。








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