少しずつ体温が奪われてく感覚に溜め息をつき、雲に覆われた空を見上げる。
僕は傘も持たず、空から容赦なく振りつける雨に濡れながら道を歩いていた。


「やっぱり出掛けるのは明日の方が良かったな…」


1年の中で最も天気予報があてにならない梅雨の時期、今日は久しぶりに外へお出かけできるでしょう、なんていう予報は見事に外れ、今は土砂降りだ。

そういえば鬼道君が朝、今日は雨が降るって言ってた気がする。
それでも外へ出掛けたかった僕が天気予報を信じた結果がこれだ。

次回からは天気予報より鬼道君をあてにしようかと考えながら、どうせ濡れるのだからと、前方の水たまりにわざと入り歩く。

すっかり雨で冷たく重くなった体は、ただゆっくりと帰路へと向かう。





「―――!」


ふと、誰かに名を呼ばれた気がした。
気のせいかと思いつつも振り返ってみると、後ろから見覚えのある人物が此方に走ってきている。

その正体は僕等のエースストライカーであり、僕が密かに想っている人物だった。


「あ…豪炎寺君…」

「お前は馬鹿か!」


顔を合わせて開口一番に馬鹿というのはいかがなものか。
少し小言を返してやろうと思ったけど、傘を僕にさし心配そうに見つめる彼を見たら(僕が悪い事した訳ではないのに)何だか申し訳なくなってきた。


「あの、豪炎寺君…」

「悪いが話は後だ、このままでは風邪を引く」

このまま俺の家に寄っていけと、僕は返事をする暇もなく、半ば強引に連れられながら豪炎寺君の家に向かった。





家にたどり着くと、豪炎寺君はガチャリと鍵と回し玄関のドアを開ける。

「吹雪、入れ」

頭からつま先までびしょ濡れになった僕は少し躊躇しながら中へ入った。

僕に傘をさしていたから、案の定豪炎寺君もびしょ濡れで。
僕のせいで風邪を引かせてしまったらどうしよう、と不安になった。


結局どうしようもなく俯いていると、頭に大きなタオルを被せられた。

「少ししたら風呂が沸く、それまではシャワーで我慢してくれ」

言葉と共にタオルと服を渡す彼は、どうやら僕が思考に耽っている時間にお風呂を沸かしてくれたらしい。
僕、本当にお世話になってるな。


心の中で感謝しながら、教えてもらったバスルームへと向かった。