※独占する口実の続き




昼食休憩まであと少し。

休憩に入る前にDFの確認をしようと考えていた風丸は、いつの間にかいなくなっていた仲間に気づいた。


「あれ、綱海と吹雪は?」

「そういえばいないっスね」

「俺も見てないな
円堂なら何か知ってるんじゃないか?」

壁山と土方も見てないと首を横に振る。
とりあえず円堂なら何か知ってるかも、円堂のいるゴールに向かおうとしたが、

「風丸さぁん!」元気のいい声に引き止められた。

「虎丸、どうした?」

「吹雪さん知りません?」

「俺も見当たらないと思って、今から円堂に聞きに行こうとしてたんだ」

「俺も行っていいですか?」

「あぁ、いいぜ」

用事があるならと、風丸は虎丸と共にゴールへ向かう。


ゴールでは、円堂が立向居と話をしていた。

「話の途中に悪いが、吹雪と綱海を知らないか?」

横では虎丸が綱海さんもいないんですか!?と驚いている。

「吹雪と綱海…?
ああ!あいつ等なら吹雪が具合悪いとか休ませて来るって綱海が」

「何だと」

円堂の言葉を遮って後方から聞こえてきたのは、さっきまで奥のコートで練習をしていた筈の豪炎寺の声だった。

いつの間にか話を聞いていた豪炎寺に立向居は恐怖を覚えた。

「豪炎寺さん、吹雪という単語に反応して奥の方から猛ダッシュで来ましたよ」

虎丸が一部始終を見ていたのか、鬱陶しそうに豪炎寺を見やる。
いつもはあんなに懐いている虎丸も、豪炎寺のあまりの必死さに引いている。

「円堂、俺の吹雪は綱海と何処へ行ったんだ」

「吹雪さんは豪炎寺さんのではないですよ
それにしても何処行ったんだろう…一緒にご飯食べましょうって言ったのに…」

綱海さん後で覚えててくださいね、と呟く虎丸に、風丸は頭を抱えた。

「虎丸…まさか用事って…」

「吹雪さんと2人っきりの昼食タイムなのに、吹雪さんがいなかったら意味ないじゃないですか」

ね?と同意を求める虎丸からは、黒いオーラが漂っている。

風丸はこの2人にツッコミを入れる奴はいないかと、半分現実逃避していた。


「何の騒ぎだ?」

鬼道を筆頭に、残りのメンバーがゾロゾロと集まって来た。

「綱海が吹雪をどっかに誘拐していったらしい」

吹雪の事となると仲間にも容赦ない豪炎寺の誤った説明に訂正を入れる。

「誘拐はしてないだろ
綱海が吹雪を休ませて来ると行ったっきり帰って来ないんだ」

「なる程、確かに吹雪を休ませるだけなら、綱海は帰って来てもいいはずだからな」

鬼道の言葉に、メンバーはまさかという顔になる。

「綱海の奴…まさか吹雪に…」
誰かが呟くと同時に、皆一斉に円堂に顔を向ける。

「円堂…」

「分かってる
お前ら…


綱海と吹雪を捜索するぞ!!」

「「「おうっ!!!」」」


ある者は綱海へ嫉妬を募らせ、ある者は吹雪の身を案じながら、捜索が始まった。