都会の喧騒から少し離れた、落ち着いた雰囲気のカフェ店内。ゆったりとしたクラシックが流れ、穏やかな時間を作り出している。

そんな中、カランカランとベルが鳴り、このカフェに客が来た事を告げる。

たった今入って来た客――薄紫色の髪をした、中性的な顔立ちの青年はキョロキョロと店内を見回す。
どうやら誰かを探しているらしい。

青年は下方にハネた髪を跳ねさせながら店内を進むと、窓際の隅の席に探していた人物を見つけた。

「風丸くーん!」

「吹雪、待ってたぞ」

その声に、これまた中性的な顔立ちのした水色の髪の青年が手招きする。

吹雪と呼ばれた青年は、風丸という左目を隠し、水色の髪をポニーテールにした青年のいるところへ腰を下ろした。

「今日は早かったな」

「いくら方向音痴な僕でも、此処くらいは迷わないで来れるよ!」

どちらも中性的な顔立ちの為、一見すると女子が待ち合わせしているように見える。

ふとテーブルの上を見ると、まだ口を付けてないカプチーノが置いてあった。

「飲まないの?」

「それお前の分、甘いの好きだろ?」

うん!、と嬉しそうに答え、吹雪は生クリームがたっぷり入ったカプチーノに口を付ける。
一息ついたところで吹雪が話を切り出す。

「ところで用って何かな?」

「今日、新しい仲間が入るらしい」

「あれ、明日じゃなかったっけ」

「予定が変わったらしい
そいつはもう着いてるから、暇な時間に来いだと」

「そっかぁ」

どんな人なんだろー、と吹雪は嬉しそうな反応をみせる。

「今日休みだし、予定変更したの言うついでに吹雪もどうかなって」

「もちろんOKだよ!
楽しみだね」

ご馳走様、と言い吹雪はカップを置く。

「また来ようね」

「ああ」

会計を済ませ、風丸は時計を見た。

「それじゃ行くか」

「仲良くなれるかな」

吹雪ならなれるさ、と風丸は自分より小さな位置にある頭を撫でる。

「…その人僕より小さかったりしないかな」

「あまり期待はできないな」

「…希望はまだあるもん!」

そんなやり取りをしながら、2人は目的地へと向かう。

時計は、午後の3時を告げた。