第五話 「少し話を聞いていただいてもいいでしょうか。」 「ん、なに?命乞いなら聞かないよ。」 にこりと笑い、私を見下す沖田。 こいつは相手にせず、近藤に目を向ける。 「話してみなさい。」 視線に気づいた近藤は私にそう言った。 「総司も刀を降ろして。」 「近藤さん、優しすぎですよ。」 しぶしぶ刀を鞘にいれる沖田。 「ありがとうございます。」 スゥ…と一度深呼吸をし、改めて前を見る。 「ばっかじゃねーの。」 今まで出ていた殺気が消えた。 藤堂は、みかん一つ入りそうなくらい口を開けて間抜けな顔をしている。 「大体自分たちにとって都合の悪いものを見られたからって善良な人間を捕まえて拷問?あなたたち何様なんですか。え?あなたたちは人の命を奪う権利でもあるんですか?人の命は代々受け継がれてきたものなんです。そして母親が死ぬほど辛い思いして産んだんですよ。それを無理やり終わらそうとするなんて誰もしてはいけないんです。違いますか?違いませんよね?あなたたちはそんなことも分からないですか。」 「お、俺らだって上の命令がなきゃ…っ」 「自分の意志ではなく上の命令でやってる?へーあなたたち自分の意志を持たないうすっぺらな人間なんですね。ってかそこの甘ったれの茶髪野郎、自分の意志で私を斬ろうとしたじゃないですか。矛盾してますよねー知ってますか?矛盾していることばかり言う人間って周りから信頼されないんですよー?」 最後に忘れずにこっと微笑む。 こんな風に言われたことがないのか、放心している彼ら。 「あれ。図星つかれて何も言えませんか?」 はっと目が覚めたように殺気を出し睨んできた。 「君に何がわかるのさ。 君に僕たちの気持ちがわかるわけないだろう!」 「ええ、わかりませんよ。 自分の気持ちと反することをしたとき、それを悔いて人のせいにする心の弱い人間の気持ちなんてわかりたくもありません。」 否定できないのか黙り込む沖田。 しばらく沈黙が続く。 「確かに、君の言うとおりだ。 上の命令だが、そのとおりに行動したのは我々なのだから上のせいにするのは可笑しい。 しかし、我々はそのことに誇りをもっている。そのことは、わかってほしい。」 「なら、その誇りを忘れないことですね。 忘れた瞬間、あなたたちがした行為の意味はなります。 いいですね、沖田総司。」 「…なんで名指しなのさ。」 「さっきまで忘れてましたし? あぁ、あと、そこの高い位置で髪を結んでいる彼も忘れやすそうですよね。」 「お、俺!?」 「…話がそれている。副長、話を戻しましょう。」 斉藤一の声で賑やかになった場が静まる。 そしてひとつため息をつき、土方歳三が話し始めた。 「…で、お前はなんでつぼで正気に戻ると思った? 医者のような知識があるわけではないだろう。」 「医者ですけど。」 「は?」 「いや、だから私医者なんです。」 |