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 未来永劫君と共に









正月にこの世界にきてからずっと新選組として走り続けてきた。

そんな日々も過ぎ去り、かつての仲間たちはもう傍にいない。

いるのは一人だけ。



そのたった一人も、今、いなくなろうとしている。





















戦いが終わり、二人で此処に暮らし始めた。
緑に囲まれて水がきれいな場所。

自然の恩恵で羅刹としては回復に向かっている総司くん。
でも、病魔は着々と彼の体を蝕んでいる。

医者なのに。
一番大切な人を助けられないなんてすごく滑稽。
苦しいくせに、心配させないように笑顔を見せてくれるのに…
それなのに私は何もできていない。
今までの感謝の気持ちも、初めて感じたこの気持ちも、あのことも、十分に伝えられないまま。
















「ねぇ雅」

「…どうしたんですか?」








草むらで日向ぼっこをしていると、ふと何かを思い出したように口を開く総司くん。
じーとこちらを見ると悲しいような笑顔を浮かべ抱き着いてきた。






「…あったかいね。
 ずっと、こうしていたいなぁ。」






なんて言って優しく頭を撫でてくれるから。
私が泣いちゃいけないのに涙が溢れそうになる。











「未来って、どんなふうになってるんだろうね。」

「え?」

「今以上に刀は必要なくなって、雅がいた世界と同じようになるのかな。」










話の意図が分からなくて黙る私をよそに、くすくすと笑いながら話を続ける総司くん。









「きっとさ、未来でも僕らは隣にいるよね。」









切ない声で言う総司くん。
あぁ、もうすぐなんだな、って、悲しみのどこかで冷静に考える私がいる。








「…絶対、隣にいる。総司くんの隣にいるのは、私だけです。」

「うん、当たり前だよね。」










二人で笑いあう。

触れたところから感じる彼の温度。

なににも例えられない彼の香り。

これが最後だと思うと、また鼻の奥がつんとしてくる。
…だめ。笑って送り出すって決めたんだから。














「時間みたいだね。」













総司くんも分かっているみたい。
肩に回された腕が強くなった。










「僕の心は、永遠に君のものだよ。」











その言葉が合図のように、さらさらと灰に代わっていく。
羅刹の毒はなくなったと思ってたのにな。
灰だけでも、と思ったが風に吹かれて飛んで行ってしまった。

…唇をかみしめて上を向く。




















「追いかけてなんてあげませんから。


 生きてみせます。」
















「この子といっしょに。」


















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沖田総司 享年

1868.5.30
2012.5.30





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「見えない臓器の名前は」
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