小説 | ナノ



 その冷たさが彼の温度






「…運の悪い奴らだ。」














ちょっと足を延ばしてお散歩をしていたら白髪で赤目の人たちに出会いまして。
いろいろあって新選組でお世話になることになって1月。

なぜか私は自由行動が許されよく幹部の人たちとお茶を飲んだりもしている。
しかし一緒に捕まった雪村さんは小姓としてたまに雑用を任されているが、基本部屋から出られていないらしい。
そのせいか会うたびに睨まれ、今は洗濯物を押し付けられた。






「…はぁ。」





両手いっぱいの洗濯物を抱え廊下を歩いていると、前から土方さんが歩いてきた。
あれ、なんか怖い顔してる。





「雅…この洗濯物、どうした。
 雪村に押し付けられたのか?
 あいつ、雅に……
 これはいいから、休んでろ。な。」





一人でぶつぶつ言うと洗濯物を奪い取り、頭を撫でて戻っていく土方さん。
えーと…ま、いっか。
持っていた手拭いで頭を拭いて歩き出す。


時間ができたしどうしようかなと思っていたら、沖田くんに誘われ縁側でお茶会。
いつのまにか幹部全員と+αが集まってきている。




「お茶をどうぞ雅くん。」

「雅ちゃん、これ僕が買ってきたんだ。おいしいよ?」

「そんな甘ったるい奴よりこれの方が雅は好きだろう。」

「どうせだから飲もうぜ、雅!」

「たまにはいいかもなぁ。」

「まだ昼間だっつーの。ほら、おじさんたちに捕まる前にこっち来いよ。」






そんな風にわちゃわちゃしていたら、清々しい顔をした土方さんがやってきた。





「どうしたんですか、土方くん。
 何かいいことでも?」

「あぁ…邪魔な虫をちょっと…な。」




そう言ってニヤリと笑う土方さん。
周りは意味が分かったみたいで同じくニヤニヤしている。




「えー土方さん、とうとう始末しちゃったんですか?
 僕もしたかったなぁ。」

「いや、まだ利用価値はあるからな。始末はしてねぇよ。」

「ですがあれ程度いてもいなくても変わりません。
 …いや、いると食費などがかかるだけですよ。」






それもそうだ。
なんて笑っているが、なんのことか分からない私はただ首を傾げるばかり。
そんな私に気付いた藤堂くんが




「雅は気にすることじゃないからなっ!」




と、笑顔で言ってくれた。
じゃあ気にしないことにしよう。
お茶をずずっとすすった。

そのとき、空気が変わった。





「ねぇねぇ雅ちゃん。
 そろそろ名前で呼んでほしいんだけど。」

「うわ、総司ズリィ!
 雅、俺も俺も!!」





なんだか周りが騒いでいるが、そんなことに構う余裕はない。
だって、今、
ずっとずっと会いたかった彼が
すぐそこに…







「雅」








私の名前を呼び、抱きしめてくれた薫。
久しぶりの薫の香りに、思わず涙が出そうになる。






「ごめんよ、色々と面倒なことがあって遅くなった。」






大丈夫、そう意味を込めて首を横に振る。
するといつもの少し冷たくて優しい手で頭を撫でてくれた。
やっぱりこの手が好き。

薫に夢中になりすぎて新選組の人たちのことを忘れていた。
チャキッという刀の音で、やっと今は二人きりではないことを思い出した。






「てめぇ、雅から手を放しやがれ!!」

「雅に手を出すなんて死にたいみたいだな。」

「雅のことは俺らが守る!」






私を守る?
私を守ってくれるのは薫だけ。薫だけがいい。

この人たちは何をしているんだろう。






「何を言っているのかな。
 雅は俺のだから、お前らは必要ないよ。」





薫も同じみたいで呆れた声だ。






「んなわけねぇだろう!
 さっきだって、首を振ってお前から逃げようとしてたじゃねぇか…なぁ!」

「違いますよ。」







私が口を開くと静まり返る。








「私が好きなのは薫。
 私が傍にいたいのは薫。
 私が守ってほしい、そして守りたいのは薫。
 あなたたちなんてどうでもいい。」


「そういうことだから。」









薫にお姫様抱っこをされて塀を登り新選組を後にする。
後ろで何か聞こえるけど知りません。














「雅、俺、雅切れなんだ。
 帰ったら充電させてくれるよね。」

「うん…てか、私も薫切れ。」






二人でぷっと笑うと、薫の冷たい唇がふってきた。





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