第二十一話 次の日の夕餉の時間。 先日あんなことがあったのに、なにもなかったかのように広間で座っている雪村。 「(今日の監視左之だろ!?)」 「(厠に行ってる間にいつのまにかいなくなってたんだよ!)」 「(ふーん。勝手に抜け出したんだ…)」 丁度幹部が集まる手前で広間に入り、それと同時に食事も運ばれてきてしまったため追い出すことができない。 しかし雪村が座っている場所は端ではなく真ん中寄りの位置。 そのため誰か2人は必ず雪村の隣に座らなければならない。 前回は幹部たちの円から離れた位置だったためまだよかったが、今日はそうにはいかない。 「(おい、さっさと座れよ。あそこお前が座ってるとこだろ?)」 「(いつもあそこってわけじやねーし!)」 「(それより責任とって左之、お前いけよ!)」 「あの、何かあったのですか?」 入口で固まっていると後ろから声をかけられた。 彼らは勢いよく振り向くと、助かった!とでも言うような顔をして雪村を指さす。 「ああ…今日雪村さんはあそこで食べるんですね。 彼女の分も今持ってきます。」 「え、いや違くて…」 「香崎さん、気が利きますね!」 「…」 そうして始まった夕餉の時間。 話し合いの結果、雪村の隣になった二人は肩を落としている。 「あんとき厠に行かなければ…」 「これなら、新八っつぁんさんに飯取られる方がましだっつーの…」 温度差が激しい中で食事をとっていると戸か開いて厳しい顔をした井上が入ってきた。 「食事中すまないね…少しいいかい?」 「どうしたんですか、井上さん。」 井上の表情からただごとではないと感じ、自然と箸を置き視線を向ける。 井上は、それを確認し口を開いた。 「…山南さんが、隊務中に重傷を負ったそうだ。」 |