第十六話 部屋の前で山崎と別れる。 一緒に…と言おうとしたが、やはり幹部と忍では無理だろう。 言葉を出す前に口を閉じ、一言お礼を言った。 「失礼します。」 中に入るともう全員揃っていたようで、待ってましたという顔をしている。 「お待たせしてしまったみたいですみません…」 「いいから、さっさと座って食おうぜ!」 座布団をぽんぽんと叩かれ、そこまで歩いて座る。 私が座ったのを確認すると一斉に食べ始めた。 それを遠目に自分も箸をすすめる。 「そういえば遅かったね。 何かあったの?」 「いえ、ちょっと…」 「また絡まれてたのか?」 副長の言葉に苦笑いで言葉を濁す。 嫌な雰囲気になってしまったため、話をそらそうと口を開いた。 「 あの、待ってくださらなくてもよかったんですよ?」 「飯はみんな揃って食うもんだろ!」 「ふーん、じゃああの子と食べてきたら?」 「あー…それは勘弁。」 場が賑やかになると思い出したように声を漏らす局長。 「どうかしたのか、近藤さん。」 「いや、明日からトシと山南さんが大阪へ行くんだ。言おう言おうと思っていたのに忘れていたよ。」 「言ってなかったのかよ…」 「まぁまぁ、お土産待ってますよ、土方さん。」 「誰が買うか!遊びじゃねーんだよ!」 「大阪へ…か。」 山南さんが、いや、新撰組が変わる原因となる出来事が始まろうとしている。 変わってほしくない。というよりも、医者としてこれから怪我をすると知っているのに放っておきたくない。 かといって私が言ったところでちゃんと聞いてはくれないだろう。 私が同行するというのは無理があるし… 副長は明日出発すると言っていた。 それまでに見つけなければ。 少しでも最良の選択を。 |