第十二話 井上に連れられ玄関へ行くと、眉間に皺をよせた男性を先頭に6人の人たちが待っていた。 「おい、あの親父、雷親父で有名だよな?」 「うわー何やらかしたんだろ、あいつ。」 男性は私の姿を見つけるとどんどんと足音を立てて近付いてきた。 その迫力ゆえか、前にいた幹部たちが後ずさる。 出来た少しの隙間から割り入るようにして入ってきたその男性は、ぐいと私に顔を寄せ手を掴んだ。 いきなりのことに、周りが驚いている。 そんな周りなんてお構いなしに口を開く。 「先生…ありがとうございました!!」 ぴよぴよぴよ もしこれが漫画なら、ヒヨコが歩いている背景にこの効果音がぴったりだろう。 だがそんなことには気づかず話を目の前で続けられた。 「あのときはもうだめだと思いましたが、先生のおかげで傷も残らずすみそうです!」 「それはよかった。 気になることがあったら気軽に声をかけてくださいね。」 「はい!」 「…ねぇ、どういうこと?」 沖田の問いに、6人が少し大げさにこれまでのことを説明する。 この男性との出会いはつい先日、山崎と薬草を取りに行ったとき。 離れた場所でとっているとき、怪我をしている彼の娘さんの治療をさせてもらったのだ。 「近くにいた町医者にはもう無理だと言われていたのに、この先生が治してくださって…っ」 涙ぐんで話されどうすればいいか困っていると、急に顔をあげた。 「先生は新選組の専属医師なんですよね? 何かあったらまた来ますのでよろしくお願いします!」 「え、いや、専属では…」 「新選組のみなさんが幸せですね、こんな名医が近くにいて! それでは私たちはこれで。 あ、これよかったらみなさんで召し上がってください!」 男性の息子らしき人に早口で話されると、それでは、と足早に去って行ってしまった。 「…とりあえず、広間に戻るか。」 |