小説 | ナノ



 第八話



あの後平助に医務室に連れてきてもらった。
なんでも、基本的には自由にしていていいらしい。
…とは言っても、監視の目がなくなることはないが。
今だって頭上から視線を感じる。
さっきまでは平助で、今後は彼か。

どうしよう。
気にしないようにして部屋内の確認をしていたが、いい加減疲れてきた。
丁度聞きたいこともあるし…
よし、呼ぼう。




「あの。」




彼がいる方向を向いて声をかけた。
ビクッと驚いているのが気配でわかる。




「誰かは分かりませんが、そんなところにいるのなら下にきていただけませんか?
 聞きたいこともあるので。」




少し間が開くと、上から人が降りてきた。



「…何故俺がいると分かったんですか。」

「さぁ、何故でしょうね。」



気づかれていないと思っていたのだろう。
とても不機嫌そうに聞いてきた彼に、少し笑って返す。
すると眉間に皺がよった。
また口を開こうとする彼よりはやく、私は口を開いた。



「そんなことよりも、ここにある設備について教えていただけます?」



不服そうな顔をしているが、大方土方から事前に指示があったのだろう。
丁寧に教えてくれた。




「ここに薬箱、そちらには薬箱の中身の予備があります。」




やはり幕末には、医療器具どころか応急処置類のものもあまりない。
たまたま私が持っていた医療セットもすぐなくなるだろうし…
薬も作っておかないとだ。



「この近くで薬草がとれる場所はありますか?」

「…はい。一里ほど離れたところですがいい薬草がとれる場所があります。」

「じゃあ明日にでもそこへ案内していただけますか?」



分かりやすく顔をしかめる彼。
監察なのにこんなに分かりやすくしていいのかな。




「…土方さんに訊いてみます。」

「お願いします。」














次の日、土方もあまりいい顔はしなかったが許可をだしてくれた。
監視対象であるのに外へ出ていけるのは、それだけ新選組に医療環境が整っていないからだろう。
そんなことを考えながら歩いていると、すぐにその場所についた。


「へぇ…想像以上です。」


せいぜい2、3種類かと思っていたが、その何十倍もの薬草が育っている。
これなら大量に作れそうだ。



「…あなたは薬師でもあるんですか?」


ここまでずっと黙っていた山崎が口を開いた。



「えぇ、一応。ですが私は西洋医学を学んだので、東洋医学とは少し違う点もあるかと思います。」



この時代、西洋医学は使われていなかったはず。
そのためかとても興味深そうな顔をしている。



「後でここの薬草を使って薬を作ります。
 手伝っていただけませんか?」






山崎ははっとした後、ばつの悪そうに頷いてくれた。

さて、帰ったら久しぶりの調合だ。
配合についてまとめた冊子はもってきたのだろうか。
まぁたとえなくても大体は頭に入っている。

今日は徹夜で薬を作ろうか。
少しわくわくしている自分に苦笑しつつも黙々と薬草を採り続けた。





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