寓話的な彼。
(♂夢/忍卵/五年生/オリジナル要素強/体は女/死表現)
死んでしまった五年生。
死後、自分の分身といわれた女の子の体に入り、主人公を愛していた五年生たちを癒す。
女の子は、現世で体が出来上がってから、神の国で大罪を犯して魂が監獄に入れられてしまった。
眠り姫のように生きながら目覚めなかった少女に、主人公の魂が呼ばれた。
曰く、自分と彼女の魂は双子のようなもので、魂の波長がまったく同じなのだという。神から体の未練を晴らす使命を受け、状況を理解できぬまま同情と慈悲だけで首を縦に振る。
『慈悲深い貴方に神のご加護がありますように』
外見はまったく違う。だけど彼を愛した五人は、彼女に彼を感じて、不思議な力に心が解けていく。
よしよしと優しくしてあげる主人公。
『おまえら残して、死んじゃってごめんな』
それは言葉には出来なかったが、みんなにはきっと伝わった言葉だった。
天女がやってきた。
美しい人は多くの少年たちを魅了し、手込めにしていった。
彼女は彼に近づいてこう言った。
―――ねえ返して。
―――それは私のものなんだから。
―――貴方が代わりにあそこに行ってよ。
―――だって私たち、同じ魂でしょ?
―――『大罪を犯して神から罰せられた、この肉体に宿るはずだった少女』
強い、愛憎。
彼女の愛は自己愛で、愛しているのは彼ではなく自分の肉体。
邪魔な自分を排除しようとしている。目が、人とは思えないほど黒く濁り渦巻いている。
自分は肉体から呼ばれてこの体に宿った。
彼女は………?
「もともと中にいた魂を悪魔の炎で燃やして、空席を作ってもらったの。人間臭い欲がある奴はみんな、私の言うこと聞いてくれるんだから」
警報が鳴っている。
彼女は危険だ。
愛した彼らも彼女の魔術的な魅力にとらえられた。
助けなければ。彼らを助けなければ―――!!
彼女を消滅させられるかどうかは賭け。
結果は相討ち。彼女の力は強かったが、肉体と魂の不一致が滅することを適えた。
肉体は心臓を止めようとしている。目が覚めた彼らが彼を囲む。きれいな涙を流して。
「いやだ!いやだ!もう離れたくない!ずっと一緒にいてよ○――――!!!」
それは誰の声だったのか、判別できないまま彼は目を閉じた。
『ばいばい』
『もう立ち止まったらダメだぞ』
『またな』
神様。
人の涙ってきれいだな。
宝石みたいだ。
神様。
ありがとう。
『きっとまた逢える』
『だって、こんなに愛し合っているんだから』
見上げた空は、美しく晴れていた。
それを見て誰かが言った。
『天国』と。