雷蔵と二卵性双子。









(♂夢/忍卵/不破雷蔵/鉢屋三郎/色々捏造/醜悪表現注意/長文ネタ)



雷蔵の双子の兄。二卵性なので外見は似ていない。微笑ましく仲のよい二人。
主は本の虫。二人で本の内容を共有する時は主が雷蔵に読んで聞かせていた。雷蔵は主の朗読が好き。心地よくていつのまにか寝ては主人公に叩かれている。

決断力がある。雷蔵の迷い癖を知っているため雷蔵が迷いはじめる前にさっさと決める。
「僕こっちにする。雷蔵はこれね」
「うん」
雷蔵に嫌いなものが渡らないようにする。(雷蔵は『もしかして○も嫌いなんじゃ…』と考えなくてもいいこと考えはじめるから決まらない)自分が好きなものを独り占めするための即決ではない。

二人で山に遊びに行ったとき、怪我をした栗鼠を見つけて保護。怪我が治るまでは自宅で療養し、栗鼠が元気になったら山に帰した。だが愛着が湧いてしまい、山に行くたびに栗鼠に会いに行った。栗鼠は耳が片方ないからすぐわかった。

ある時、嵐がやってくる。二人は栗鼠の安否が気になった。ひどくなる雨のなか、危険な山へ行くかどうか迷っている雷蔵を家に残し、○は一人飛び出す。雷蔵は○を追おうとした。だが雷蔵より早く○が言い放つ。

「雷蔵は待ってて!あいつ助けたら絶対に戻るから!」



○は戻らなかった。

大人がみんな山を捜索したが見つからなかった。増水した川が勢いをつけて流れていた。誰かは流されてしまったのだと言った。
母は泣いていた。父も泣いていた。雷蔵は泣かなかった。
だって、戻ると言ったもの。戻って来られないだけだもの。絶対に死んでなんかいないもの。
そう信じているのは雷蔵だけだった。

雷蔵は取り憑かれたように本を読んだ。○と同じことをすれば引き寄せられて○が帰ってくると思った。根拠はない。だが雷蔵にはそうすることしか出来なかった。あの日○と一緒に行かなかった自分をひたすら後悔した。

忍術学園に入学。鉢屋三郎と出会う。自分そっくりに変装する三郎に双子の兄を重ねる。もちろん顔は全然似ていない。だが兄を求めていた雷蔵は自分と同じ顔の三郎を兄と重ね、対応は違えど兄と同じように大切にした。兄と三郎が違う人間という正常な認識はある。

誰かが言った。
「お前らまるで双子みたいだな」
と。

瞬時に行方不明の兄を思い出した雷蔵。だが、顔も声もうろ覚えで、思い出そうとするほど記憶は霞む。ただ会いたい気持ちだけが溢れた。その日雷蔵は一人で泣いた。



休日。
雷蔵は友人たちと外出した。そこで兄と瓜二つの少年を見つける。一瞬息が止まる雷蔵。すぐさま追い掛けた。

「○!」

雷蔵に捕まり驚く少年。あんなに思い出せずにいた兄の顔だが、見れば見るほど兄の○だった。
少年は言う。

「君は誰…?僕は○じゃない。人違いじゃ?」

「僕の名前は雷蔵です」

自分の名前を名乗る少年。気が動転する雷蔵。
なぜ僕を知らないと言う。
どうして僕の名を名乗っているんだ?
顔も声も纏う雰囲気も全て○に間違いないのに。

少年の兄という男が現れる。事情を説明すべく、友人たちと別れ彼らの家に訪問する雷蔵。

少年は数年前川に流されていたのを今の兄に拾われた。名前を聞いたら雷蔵と答えるだけで、他は何も覚えていなかった。以来家族として一緒に住んでいるという。

雷蔵はそれを聞いて確信した。彼はやっぱり○なんだ。
雷蔵は○と生き別れた日を彼らに話す。それを聞き、確たる証拠はないものの人の好さそうな彼らは雷蔵を信じてくれた。
ただ○だけ戸惑っていた。
雷蔵はそれを見て、謝罪する。

「雷蔵さん、突然ごめんなさい。って…僕も雷蔵なんだけど…。だけど、ずっと会いたかったんです。ずっと、生きてるって信じてました」

○の胸に何かが込み上げてくる。

「なんとなく、僕も君に会いたかったのかもしれない。足りなかったものにやっと会えたような気がする」

双子だからかな、と控えめに言う○。雷蔵も心のどこかで、○ならそう言ってくれると確信していた。(双子の神秘)


「ところでなぜ雷蔵と名乗っていたんだい?」

「名前は?って聞かれたときに浮かんできたのが『雷蔵』って名前だった。きっと僕、君のことが好きだったんだよ」

雷蔵は嬉しくて泣いた。他の全てを忘れていても、自分だけを覚えてくれていたことが言葉に出来ないくらい嬉しかった。

それを屋外で密やかに聞いていた三郎。焦った。雷蔵を取られると思った。
雷蔵に依存している三郎は、○を敵だと思った。

休みの度に会う雷蔵と○。幼い日々を思い出し、雷蔵は幸せだった。○も雷蔵と会って記憶を失う前のことを不意に思い出したりした。

三郎はいつも陰から二人を見ていた。雷蔵の隣を奪われた嫉妬心を○に向けた。

雷蔵の姿で○に近づく。雷蔵だと思うが、○はすぐに違うと気付く。
「誰?」
完璧な変装が見破られたということにプライドが傷つけられ、更にそれは血を分けた実の双子だからかと思うと最早憎悪しか生まれなかった。決して他人が干渉できない血の繋がりがあるからか。

「お前なんか、死ねばよかったのに」

○の首を絞める三郎。○は死を予感した。苦しくて死ぬかもしれない。
「らい、ぞう…」
死ぬ間際まで求め心を繋げるのか。三郎の指に力がこもる。人が来て死には至らなかったが、○は気絶した。

なぁ、どうしたら雷蔵と離れる?
なぁ、どうしたら雷蔵を返してくれる?
私を受け入れてくれた雷蔵を、奪わないでくれ。

幾度となく○を殺そうとする三郎。そのうち姿に惑わされて、○は本物の雷蔵でも出会い頭には恐怖心を持つようになる。それに気付く雷蔵。○には何も言わず、忍術学園に帰ってから三郎に問う。

「三郎、○に何かしたのか」

「なぜだ?」

「○が僕に怯えてる。いや、僕だとわかるといつも通りだけど、僕の姿を見ると恐がってるんだ」

「それで私を疑っているのか。雷蔵が何かしたんじゃないのか」

「僕は○を恐がらせるようなこと絶対にしない」


「○○○って…そんなに大事か!!私を疑ってまで○の味方をしたいか!!私よりも、○が大事なのか!!」


「僕は…」

「言えばいいだろうっ、私の言う通りだと…!○が一番大事だと………!!!」


飛び出す三郎。
走り続けながら、居場所がなくなったことを頭の中で反芻させた。怖かった。一人っきりだと思った。
気付けば○のもとへ来ていた。○さえいなければ、雷蔵はずっと私と一緒にいたのに。

○の前に姿を現す。怯えた目を向けられた。空虚な心に何か浮かんだが、何かはわからなかった。

「なぁ、返してくれ。雷蔵だけなんだ。雷蔵しか受け入れてくれなかったんだ。」

なんで、こいつが雷蔵とかぶるんだろう。
なぜ私はこいつに弱音を吐いているんだ…?



『双子だから』?



なら。
雷蔵と命を分けている存在なら、お前も私を受け入れてくれよ。

夢遊病の心地の中、三郎は○を抱いた。抵抗できないように拘束して無理矢理抱いた。泣いていたような気がするが、よくわからなかった。





「三郎、ごめんね」

後日、雷蔵に謝罪される三郎。お互い口を利けずにいたのにどうしたことだろう。三郎は困惑した。

「○に聞いてみたんだ、何があったのか」

びくり。
思い出すは先日の情事。雷蔵に知られてしまったのなら、今度こそ許されないかもしれない。ではあの謝罪は?
思考が混乱する三郎をよそに、雷蔵は続ける。

「『寂しがり屋さんが構って欲しがってただけ』だって言ってたんだ、○が。早く仲直りしろって」


驚いた。

まさか本当に受け入れてくれたとでも言うのか。
もう一度ごめんね、と言う困り顔に似た笑顔で雷蔵は言った。
二人は仲直りした。



後日談。

「だって泣きながら『雷蔵返せ』って言われたら寂しかったんだなってわかるよ。雷蔵はほら、優柔不断だろう?焦って答え出そうとして間違えちゃうことあるんだよ
え?殺されかけたとき?あー、あれはだって理由もなくあんなことされたら怖いよ。しかも雷蔵にそっくりだし。雷蔵のストレスが別人格を生んで僕を殺しに来てるのかと思った」

「殺されかけたとき?」

「三郎に」

「三郎…?」

「いや、あの時の私は雷蔵を想うあまりに我を忘れて」

「三郎、そこに正座しようか。いますぐ○にあわせた目と同じことしてあげる」

「ギャーーーッ!雷蔵っ刀!振り上げるな殺す気か!」

「三倍返しは喜ばれると思ってね。」

「目が本気だぞお前!!」



命懸けの鬼ごっこする二人に、「僕も混ぜろ!」と突進していく○。
○の義兄はそれを見て微笑ましく言った。

「お前ら三人、兄弟みたいだな」




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