歌姫パロ。






(♀夢/英雄学/爆豪勝己/notヒーロー志望/あき「歌姫」パロ×禁断のレジスタンス(PV)妄想)





何かを待つように、何かを願うように、一人で歌い続ける荒廃の姫。

残る記憶は優しく、だけど輪郭は朧げで、それは夢を見るように儚い。どんなに馳せても決して思い出せなかった。そこには誰かがいたような気がする。どうして思い出せないのか、どうして自分がここで一人歌い続けているのか、それすらも思い出せない。
忘れた覚えなどないのに、ここ以外の場所を知っている気がするのに、自分’たち’は幸せだった気がするのに、荒野の廃墟では歌う以外、何をすればいいのかわからない。ただ、歌だけが与えられていた。







―――この絶望とした楽園で、私は
(引用:水樹奈々「禁断のレジスタンス」より)







◎は一人で歌い続ける歌姫。姫は分割された土地につき一人いる。姫に歌わせることは王政の安泰を象徴することで、歌がなくなればその均衡は崩れるという伝承がある。

歌姫は一子相伝の声を持つ者に与えられる務め。その声は歌姫にしかわからない特別な声。
その声を持たない者は声の響きを聞き分けられる耳がないため、それぞれの歌姫の声が同一であることがわからない。


歌姫はその土地の長に管理されている。歌姫を逃がすこと・殺すこと、失うに繋がることは大罪。管理者は歌姫の生殺与奪を握ることに余念がない。そのため、歌姫は管理者・自分の世話役以外の存在を知らないということがほとんど。与えられた家で、与えられた食事と知識で、与えられた歌で、与えられた生命を全うする生涯となる。鳥籠の中で飼われる鳥も同然。
歌姫が歌う場所は古来から決められており、◎は広い石造りの廃墟で一人きりでいる。かつて歌が途絶えたことによって滅びた城と言われている。


土地の長は轟家で、焦凍は歌姫管理の跡継ぎ。管理の勉強を含めて世話役になってる。街から食事を持ってきてくれるのも、知識を与えるのも焦凍の役目。
歌姫に不要な知識を与えない為に、世話役以外の人間が歌姫の生活区域に入ることは禁じられている。
いわば洗脳しているも同然なので、◎は焦凍の言うことを笑ってよく聞く。焦凍は街で普通に生きている人間でもあるので、女一人きりでこんな場所で孤独に生かしていることに多少の後ろめたさがある。

他者が入れないように廃墟の周りにはトラップを仕掛けているので、誰かが入ってきて危険が迫ることはない。その点については心配していないが、寂しいだろうと思う。だが寂しさを知らせることも脱走の原因になりかねないので、焦凍がいれば寂しくないと◎に思わせることも焦凍の役目であった。





ボロボロの勝己がこの土地に来る。息絶え絶えで豪奢な廃墟を見つけ、中に入る前にぶっ倒れる。物音に気付いた◎が外に出て、戸惑いながらも勝己を廃墟に入れる。非力なので超頑張った。


食べ物は与えられないとないけど、水は蓄えがあるので水を飲ませる。



勝己が同じ声。

「あなた、私と同じ声…」





「…お前馬鹿か?向こうの丘にリンゴ成ってんだろうが」

「リンゴ?」

「あ?てめぇまさかリンゴ知らねえとか言うんじゃねえだろうな」

「知らないわ」

「…」


勝己に知恵を与えられていく。
だがそれは誰にも言うなと言われた。

ここに来る前、勝己はトラップに気付きそれを避けてきていた。この先に行けば、誰も入れない場所があると確信して廃墟まで来た。だがその確信の理由はわからなかった。古い記憶を頼った気がするが、それも朧げなものだった。

「てめぇはなんでこんなとこで歌ってんだよ」

「…さあ。考えたことないわ。でも、そうするのが務めだから」

「はっ」

愚かしいと鼻で笑う。









歌姫は一子相伝の声。
その土地で歌を途切れさせない為には、歌姫の子供が必要だった。

焦凍は世話をするごとに大切にしたいという気持ちが芽生えてきているので、あまり怯えさせないようにと、時間をかけて男として触れていく。

「今日、新しいことを教える」

「うん。何?」

「目ぇ閉じろ。いいって言うまで開けちゃダメだ」

「うん」

キス

「…いいぞ」

「今のは何?」

「俺がお前のことが好きだっていう証だ」

「そう。焦凍は私が好きなのね」

「ああ」

「私も焦凍が好きよ」

「ああ」

その日から焦凍が帰る時にキスをする。

「じゃあ、また明日来る」




触れるだけのキスを何日かした後、舌を絡ませるようになる。

「…なんか、変」

「どういう風にだ」

「なんか、きゅうってなる。背中とかが。顔も熱い」

「それでいい」

「そう…?」

「明日また教える」

「うん」




「勝己」

「あ?」

「キスしていい?」

「は?」

「背中がきゅうってなるの、なんだかよくわからないから、もっとしてみたい」

「…それ世話役にされたんか」

「うん」

「だろうな」

キスをする。舌を絡めて、髪を掻き上げて、息が苦しくなるほど深いキスをする。熱い息が漏れる。夢中になった。

「もっとして」




「勝己のことをもっと知りたい」




知らないはずのことを◎が知っていて、誰かが歌姫の生活区域に入っていることを推測する焦凍。
轟と勝己が接触し、戦闘。焦凍は歌姫を守る役目のため。勝己は己が生きるため。

戦闘後、勝己はその生活区域を去る。
もともと隠れ蓑として廃墟にいたので見つかったら用はない。



「そっか、誰もこねぇと思って教えてなかったな…」


「◎。俺以外の誰かがここに入って来たら、見つからねえようにどっかに隠れろ。会ったらダメなんだ」

「…どうして?私、勝己のこと好きだったわ」

「お前は俺を好きでいろ」

「焦凍のことも好きよ」

「好きな人ってのは一人だけなんだ」

「………」

「…今日はここに泊まる」よくわかんねえよな。

焦凍と一緒に寝る。焦凍に抱きしめられながらベッドの中で考える。


(じゃあ、私、勝己が好き)







勝己の背景とかは未定。





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