notヒーロー志望が小説の何がいいのかを語ってくれる。






(notヒーロー志望)



「私はよく小説を読むんだけど、一番の理由は物語が好きだから。物語って映像とかラジオとか漫画とか小説とか色々伝える手段があるし、本当はそのどれも好き。その中でどうして小説が好きかっていうとね、これが一番情報量が少ないからなの。映像は視覚情報と音声。漫画は文字と絵。両方とも限られた視覚情報の中で空間の表現を見せることができるし、音声だって間を作って表現することができるでしょう?でも小説は文章だけ。始まった文章は空間を開けずに次の行に並ぶ。その等間隔に並ぶ文字の中で、長い時間とも思える一瞬や、美しい情景や、意識の底より深く揺れる心情があるの。多く与えられる情報によって想像が制限されることもない。ただ白い紙に黒い文字が並んでるだけの中に全部あるのよ。もちろんそれは読み手の想像力にも左右されることなんだけど、このシンプルに与えられる文字の中に想像の種がいくつも散りばめられてると思うとワクワクする。
それで私が一番魅力だと思うのが、生きているうちに流れてしまう時間や感動を、自分が現実でその瞬間感じている時よりもずうっとずーっと深く沈めて、とても小さなことをすごく丁寧で克明に大事に感じさせてくれるところなの。目や耳から入る情報って外から入ってくるんだけど、文字は内側から感じさせてくれるの。本当にこれに尽きる。だからこれ以上話すと野暮になっちゃうし蛇足になりかねないんだけど、とりあえず私が小説が好きってことは伝わったかな」





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