交流障害サポート科コスチューム専攻。






(♀夢/英雄学/緑谷出久)



ガシャン!と、盛大な音がした。何事も起こらなければ立たない音だった。

見ると横倒しになっている自転車がカラカラと後輪を回していて、乗っていたらしい少女が体を起こして自転車から脚をどかそうと腕を支えにして体の位置をずらしていた。
あ、転んだんだ、と理解した瞬間、出久はその方へ駆けた。

「大丈夫ですか!?」

少女は大袈裟とも思えるくらいビクッと体が跳ね、慌てた動きできょろきょろと辺りを見回した。自分の方へやってくる出久を見つけると、それまでの動きを三倍速に早めて忙しなく座り直し自転車を起こそうと手をかけたが、体勢が整っておらずもたもたと腰を上げられずにいた。傍まで近付いた出久が自転車を起こすと、遅れて少女ものろのろ立ち上がった。自転車のハンドルに手を伸ばすので片方ずつ離して少女に戻す。出久が動かないので、少女はさっきの台詞は自分に向けられていたのだと思い出して、おろおろ口を開いた。

「あ、だ、だいっ…じょぶ、です…」




「あのっ、いい、いい、です。自分でできますから…」










サポート科のコスチューム専攻。服を作るのが好きで、あらゆる種類の布が好き。布オタクというかマニア。はじめはデザイン重視だったが、最近は機能性を視野に取り入れながら色々作ってる。

発目と同じクラスで、機能性とはなんぞやという時に迷った時は発目が作りまくってるサポートアイテムを先行に「このアイテムを使用するためには耐久性と裏地が…」とかを考えながら作ったりする。

コミュ障。コスチュームを作るために発目と交流しているが、私なんかが大事な発明品に触ってごめんと思うし、私が作りたいもののためにアイテムのこと色々聞いて発明に使う時間割かせて申し訳ないと常に遠慮してる。怖い人も人気者も親切な人も明るい人も暗い人も変な人も誰も彼もが苦手。
一人が一番落ち着く。その中で服を作っている時の集中力の中にいるのが最高に落ち着いてて幸せ。指示書に従って誰とも交流せず黙って服を作ることができれば最高だなと思いつつ、人と関わることや友達という存在にかなり強い憧れを抱いている。憧れの反動で極度のコミュ障となっている。爆豪と話したりなんかしたら泣きたくなる夜を三日過ごして、その後は自分の不甲斐なさを思い出しては悔いながら三年は過ごす。

自分の周りの人全てに自分に持っていない長所を感じており、常に自分に自信がない。ポジティブな気持ちと共に逃避する気持ちもコスチューム作りに向けている。

友好的に接すれば心を開いていくが、周りは主に壁を感じて遠慮するため友好的に接するような人は滅多にいない。本人が蓄積してきたコミュ障経験が周りを友達のスタート地点に立たせなくさせてる。
知り合いになることも結構ハードル高い。







―――私がこんなに人のことを怖がってる理由はわかってる。

それをされた時、私だったらどう思うのか。
不快に思うんだ。疑うんだ。優しい裏できっと私のことを笑うんだと信じるんだ。
自分がどう思うのかなんて簡単に予想がつく。

誰の行動も受け入れることができないから、自分が誰かに受け入れられるなんて思えない。
私が憧れている人達はみんな、誰からも好かれる明るい人だったり、自信に満ちていたり、才能に溢れていたり、私にないものばかり。そんな綺麗な人達に私なんかが受け入れられるなんて思えない。

私が誰にも心が開けないのは、誰のことも許せないくらい、私の心が狭いから。
私のことを傷つけたくなくて、私の中に誰も入れたくないから。

そんな自分が時々脅迫的に襲いかかってきて、自己嫌悪と誰かへの申し訳なさと恐怖が止まなくて泣いてしまう。
もっと普通に人と関われるようになりたいのに、私はそんな自分のことも確かに愛していて、憧れは綺麗な額に入ったままだ。きっと死ぬまでそうなんだ。だって昔っからずっとそうだから―――…。







出久と友達にさせたい。




×