美少年と方向音痴。
(♂夢/忍卵/神崎左門)
めちゃくちゃ美人で、美しいものが好きな主人公。作法委員会。三年い組。
そんな主人公が、まったく美しくない左門に全力片思いする。
美しいもの好きだし、ちょっとナルシストだし、お気に入りの人やものは全部美しいのに、なぜか左門にドキドキする。
そんな自分に納得しない主人公。
「(なんで僕が、あんなへちゃむくれな顔の奴を好きになるんだ!ありえない!)」
だけどドキドキは止まらない。
町で。
「あ!○!」
「作兵衛、おまえも来てたのか」
「三之助と左門のバカ二人見てねぇか?」
「…いや、見てない」
「ちくしょーっ、どこいったんだあいつら!」
「…仕方ないから手伝ってやるよ」
「マジか!助かるぜ!」
みたいな光景はよくある。
サバイバル演習で、二人一組のペアを作り条件を満たしてゴールにたどり着く三年生合同実習訓練。
「おお!僕とペアは○か!よろしくな!」
「…(いま神様ありがとうとか思った僕爆発しろ)なんだお前か。こりゃ最下位組決定だな」
「なにおう!よーし目にもの見せてやる!行くぞー!」
「だからそっちじゃないっこの方向音痴!」
何で僕、こんなやつのこと好きなんだろう。
(いや、好きなんて思いたくないけど)
進行は○がリードしつつ二人で協力し、順調に課題を進めていた。が、天候が悪くなり、なんとなくいやな感じがしてきた。
ついには激しい雨が降りだし、森での行動が難しくなる。
「焦っても仕方ない。ぬかるみに気を付けろよ」
冷静にそう言って歩みを進める○。だが左門は足を滑らせて、縄で繋がった○もろとも急斜面を転げ落ちてしまう。
木の陰でようやく止まり、結構な距離を落ちてきたと知る。受け身が取れず全身を軽く打撲した○。
「○、すまない。僕が足を引っ張ってしまって」
「それよりお前に怪我ないだろうな」
「僕は足首を捻ってしまったようだ」
「見せてみろ。僕は少し休めば動ける。雨が上がったら出発するぞ。」
「わかった」
頭巾で左門の足を固め、その場で雨が落ち着くのを待つ二人。幸い木に覆われているのである程度雨は凌げた。
「○、もしかして顔擦り剥いたのか?」
「え、ああ、そういえばヒリヒリする」
「すまない。○、綺麗な顔なのに傷を付けてしまって」
綺麗な顔。
左門から綺麗と言われて、○の顔は真っ赤に染まった。綺麗だと思ってくれていたなんて。
嬉しかったけど、噛み締めて我慢した。ありがとうと言いたかったけれど、言わなかった。
「だから、お前のせいじゃないって。謝るなよ」
そう言うので精一杯だった。
そこから元々それなりに交流があった二人だが、それ以降から胸を張って友達といえるように。
ちなみに、○は左門を猛烈に可愛いと思っている。自分でそう思ってるって認めてないけど。
左門は○を「きれいだなー」と思っている。それ以上でも以下でもない。