冬という季節は人肌が恋しくなるものらしい。それはやっぱり寒いから、だから誰かの温もりが欲しくなるってことなのかな。
だけど私の場合、それだけじゃ足りない。許されるものなら春夏秋冬365日、愛する人の温もりを感じていたいもの。
そんな風に思ってしまう私は我が儘なのかな?
「………」
隣で静かに本を読んでいる四星龍をこっそりと見つめてみる。…やっぱり私は我が儘かもしれない。だって、こうしてあなたの隣にいる今も確かな温もりを求めてしまうんだもの。
「ねぇ、四星龍」
「…何だ」
「ぎゅってして?」
私の急なお願いに、四星龍は一瞬フリーズする。するとだんだん眉間に皺が寄ってきて、目に見えて困ったような顔をされた。あれ、私としては可愛くおねだり出来たつもりなんだけどな。
「……だめ?」
「そうじゃない、お前はいつも急過ぎる」
はぁ、と大きな溜め息を一つ。
四星龍は読んでいた本をパタリと閉じ、ぶっきらぼうに両腕を広げた。
「…火傷をしても知らないぞ」
それは『来い』という合図。
私は嬉しくなって、四星龍の胸の中へ勢いよく飛び込んだ。
逞しい腕が私の背中にそっと回され、ぎゅっと抱きしめられる。伝わってくるあなたの確かな温もり。そう、私はこれが欲しかったの。
「なまえ、熱かったら言ってくれ」
上から降ってくる優しい声。
最初は呆れてたくせに、何だかんだで私を心配してくれるのね。あなたのそんなところも好き、大好き。…でもね、ちょっと意地悪をしてみたくなって。
「うん、あついよ四星龍」
即答。
だって本当に熱いんだもの。
そんな私を気遣ったのか四星龍はスッと体を離そうとする。
…だめ、そんなの嫌。私はそう訴えるように四星龍の背中に腕を回し、強く抱きついて胸に顔を埋める。
「! お、おい…っ」
「お願い、もっとぎゅってして?」
そう、もっともっと強く。
あなたの体温はこんなものじゃないでしょ?
私は大丈夫。火傷したって、熔けてしまったって平気。
例え焼け死んだとしても別に構わない、寧ろ本望。
だって好きな人に抱きしめられながら、その腕の中で死ねるだなんてこの上ない幸せだと思わない?
「…私は大丈夫だから」
だから、だからね、
摂氏6000℃の温もりで
(私を強く抱きしめて)
20140127
実際、摂氏6000℃って温もりレベルではないですよね(笑)