目の前には、ただまっすぐ細い道が続いていた。
赤黒い空の下、草一本生えていない地面に焦げたような小石が無数に散らばっている。
ここに来て、私が気付いた時には白い着物一枚だけを身に纏い素足のままで、まさに死装束の姿になっていた。
どれだけ歩いたのだろう。
既に足裏には傷が出来、小さな石を踏む度にずきんと鈍い痛みを感じて眉を細めてしまう。
『痛みますか?』
少し前を物言わず静かに歩いていた鬼灯が、足を止め また小さく呟きたずねた。
『あ、、いえ、、大丈夫です、、』
思わず強がりを言い、顔を背けてしまった。この男の瞳に捕まれば嘘など無意味で全て見透かされてしまうような気がした。
『これを履きなさい』
鬼灯は自分の履いていた履物を脱ぎ、私の前に差し出した。
『いえ、あの。、本当に、大丈夫ですから、、』
両手を振って意思を伝えたが無意味で
『強がらなくてよろしい』
そう言うと、私の前にしゃがみ込み右足をそっと持ち上げ、履物をはかせた。
『あ、、』
『この方が早く歩けるでしょう。私は忙しいのですから、あまり時間を取らせないでください』
『、、すいません。』
『また、何故泣くのですか。』
その質問には答えられなかった。
勝手に溢れてきたものだったから。
ただ、どうする事も出来ないこの絶望の中で、鬼灯がとった行動に 心が震えたから。
『ありがとう、ございます。』
優しさとかそうゆう理由では全くない事は分かっている筈なのに、
何故だかまた、涙が溢れてとまらなかった。