さらりと真っ直ぐ伸び、どこまでも深く黒く綺麗な髪。凛々しく切れ長な美しい瞳。すっと通った鼻筋に小さな唇。

額から出た突起が角であることは分かっていたし、彼がきっと、御伽噺に聞く鬼の類で有る事は容易に理解できた。

本来ならばそんなものを目にして平常心を保っていられるはずがないのに、でも、違う理由で 感情が普通ではいられなかった。

彼は あまりに美しかったから。








『貴女は地獄に堕ちたのです。これから文字通り地獄のような日々が始まります。現世での苦しみとは比べものにならない事は覚悟しておかなければなりません。いま泣いているようではこれから先が思いやられますね。ほら、立ちなさい』



差し出された手に、思わずそっと触れてしまった。

本当に、思わず、無意識に。



これから待ち受ける現世でのそれとは比べものにならない苦しみを前にして、



どうしよう
いまこんなにも心が震えている。























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