ろくな事がなかった、本当に。私が死んでも悲しむ人間なんて一人もいなかったように思う。それくらい独りだった。大切なものもひともいない、いつも心がさみしかった。でもそれを誰かに打ち明ける術もなかった。もしそうできてたらもっと色のある人生だったかもしれない。振り返ると、そう思う。
わたしが今こうして地獄にいる理由もわからない。でもきっと、何も善い行いができなかったうちに何かを傷付けたり愚かな行いをしていたのかもしれない。
もっと、なにか、生きているうちに出来る事があったのだろうか?
天国に行きたいなんて今更思わないが地獄に堕ちるなんて、そこまで。意味を持たなかったなんて。
絶望の淵にあって、
身体が言うことを聞かない、膝が上がらない。立ち上がる必要など、もうないのかもしれないと思ったら、今度こそ本当に自分の存在さえ消えてしまいそうな感覚に陥った。
『貴女、顔を上げなさい』
前触れなく耳に響く。
低く、それでいて涼やかな声。
顔を上げると漆黒のその瞳にぶつかる。
『貴女は地獄に堕ちました。
理解などしなくて良い、まず涙を拭きなさい。』
そこには
美しい男性が立っていた。
初めて、心が大きく揺れた。言葉に出来ない感情に支配される。
『あ、、あなたは、、』
『私は、鬼灯。』
こんな地獄にきて、
初めて、私の心に色が灯った。
意味が生まれた。