“虫の知らせ”とはこの事か

始めから少し気にはなっていた。





私が直接行けば良いのだが、明日までに仕上げなければいけない仕事が山のように残っていた。

だから、気にはなったが彼女を使いにやった。


本来なら、あの色狂いの白澤に注文していた薬剤であったが
あえて桃太郎から受け取るよう
きつく言い聞かせて行かせた。



大したことはない、半日あれば終わるような簡単な使いだ。





だが何故か気になる。

仕事がなかなかはかどらない。


あれから時間もだいぶ経っている。

渡した地図が分かりづらかったのか。

道にでも迷っているのか。








私は仕事の手を止め、もう何度繰り返したか分からないが


再び時計に目をやった。





その時だった。









『鬼灯さまー!!』



けたたましい叫び声とともに部屋の扉が勢い良く開いた。



『鬼灯さま!!』



そこには
ぜぇぜぇと息を切らせながら額から汗を垂らしている桃太郎がいた。

その表情から、只事ではないのはすぐに察しがついた。



桃太郎がここにいるという事は、彼女は?








『鬼灯さま、、鬼灯さまの部下の、、あ、あの女性が、、

いま、桃源郷に来ていて、、』




息が上がり、呼吸を乱しながら桃太郎はたどたどしく声を上げた。



私は、先ほどから感じていた“嫌な予感”が確信に変わる事を予見しながら、ただ桃太郎の言葉を聞いた。




『私が、、家に戻ると、、白澤さまが、、先に戻っていて、、』






白澤。

その名を聞き、私は無意識に拳をぎりりと強く握りしめていた。

それは、血が滲むほど。






『白澤さまが、、無理矢理、、彼女を、』







そこまで聞けば十分だった。

私は山積みの仕事を放り出し、部屋を飛び出した。







向かう先はただ一つ。



私は彼女を行かせた自分の愚かさに呆れながら
湧き上がる怒りに我を失いそうになるのを必死でこらえ、全力で走った。





どうか間に合うように。と



































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