ジョニィ・ジョースターの誘惑
2013/11/20 00:52
ディエ→ジョニ(?)
「あ〜ははは、でぃえごだ!」
ほんの気まぐれで入った店で、酔っ払ってへらへらとした笑みを浮かべたジョニィ・ジョースターと出会った。いつもならばありえないほど緩み切った顔だ。普段から幼い顔をしていると思っていたが、緩んだ顔は更にその顔を幼く見せていた。
座っても?と声をかけると、いいよ〜!今日はジャイロもいないから、怒られる事もないし。ディエゴも一緒に飲もう〜とケラケラ笑いながら酒瓶をズイッと寄せてくる。奥にある空きの瓶やグラスは見ないふりをした。
「んーっ!ふふ…美味しいねえ……」
「……なんだ、いやに上機嫌だな?何かいい事でも?」
「そっかなあ?いつも通りじゃあない?何にもないよお」
とくとくとグラスいっぱいに酒をつぎ一気に飲み干した。随分と無茶な飲み方をする。チーズとサラミを適当に頼んでつまみながら酒を飲む。こんな風に飲むのは久しぶりだった。チラリと横を見ればとろりと零れ落ちそうなコバルトブルーが目につく。どくりと胸の奥底が疼いた。誤魔化すようにグラスをあおって大きなため息をつく。
「どしたの。ディエゴ……お酒、美味しくない?」
「…いや?酒は美味い、が……」
「が?」
「…………お前が余りにも無防備なんで驚いただけだ」
珍しく保護者もいないしなと付け足した。男にしては大きな瞳をぱちぱちと瞬きさせて、むぼうび?と呟く。酒で濡れた唇につい目が行く。触れたがる右手を抑えて指を組んだ。ジョニィはヒョイと皿からチーズを奪って咀嚼し、飲み込むと眉を寄せて重たい唇を開いた。
「……ジャイロとは、喧嘩した」
「……ほお、それは……」
「ぼくが素直じゃないって……少しは頭冷やせ!!ってさ。だからこうしてる」
誰でも良かったんだよ。誰か側にいて欲しくてさ。言って、ジョニィはもう一度酒をあおる。オレと来るか?そう言ってしまいそうになるのを口の中に留めた。そんな事を言ったところでこいつはアレから離れる事はないだろう。サラミを口にいれて言葉と一緒に飲み込む。
「…………アイツなら戻ってくるだろう」
「そう、思う?」
「ああ。今でもきっと内心心配でたまらないって思ってるんじゃあないか?」
「……もう、子どもじゃあないんだけどね」
クスッと笑った気配がしてジョニィを見ると今まで向けられた事のない表情でこちらを見ていた。心臓が跳ねる。不意に手が伸びて頬に触れる。親指がつうっと唇を撫でた。手を払う事だって出来るのに、しないのは何故だろうか。周りの連中はとうに酒に酔っていてこちらを見てもいない。目元や鼻、顔中に触れられて思わず目を細めた。
「君の……顔、とかさ……体。すごい好みなんだよね……どストライクなの。ほんと、ハンサム。むかつく」
「……それ、は……褒められているのか?」
「褒めてるの。ほんと、ずるいよなあ。ジョッキーの頃からずっと思ってたけどさあ〜」
サラサラとオレの髪を梳いてジョニィが唇を尖らせる。かわいい、と思った。言ったら怒りそうだが。ジョニィにばかり好き勝手させているのは癪なので自分からも触れる。唇に触れた瞬間に何かがぞくりと背中を走って行った。腹の奥がきゅうっと痛む。何だというんだ。赤くなった頬、酒に飲まれ潤んだ瞳、やけに柔らかい態度。どうしたら良いというのか。抱きたい、と。男の趣味はないがそう思ってしまった。
「……ジョニィ、今夜の宿は?もう決まっているのか」
「ん……?いーや、だってジャイロに追い出されちゃったんだもん。近くで夜営しようかなって」
「…………オレの部屋に来るか?」
一時休戦にしよう。酒を奢って貰ったからな。そう言ってジョニィを見やる。断られると思った。ほんの少し考えて、ジョニィは、じゃあ、そうしようかな。とあっさり了承したのだ。これは、このチャンスは逃すべきではない。ニコリと笑ってやるとジョニィの顔が更に染まる。
(……そういう顔をするお前が悪いんだぜ。)
乾いた唇をぺろりと舐めた。
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