I hate happy ending
2013/08/24 11:49

□ディエジョニ(現パロ)

音楽をガシャガシャ鳴らして家を出る。
あーなんでこんなつまんない映画借りちゃったんだろ、と後悔しながら。

すごくありきたりなハッピーエンド。ぼくはそういうの好きじゃない。
女の子が面白いって言ってたの少しだけ興味もって見てみたらこの様だ。
さっむいし早く帰って夕飯食べてレポートやって……やる事は山積みだ。
明日は一限からだっけ?あーもう、考えるのめんどくさい。
そう思っているといきなりマフラーを引っ張られた。

「ぐえっ」

「……酷い声だな、ジョニィ」

多分、ヘッドホンでちゃんと聞けなかったけどそう言ってDioがマフラーから手を離した。
最悪、大っ嫌いな奴に会ってしまった。
舌打ちしてあからさまに迷惑そうな態度を取ってみるけれど、Dioは平然としていた。ムッカツク。

「いきなり首締めるとか何なの君、ぼくを殺したいわけ?」

「何度も声をかけたんだが気づかなかったから、引っ張った」

それ、と顎でヘッドホンを差してしれっと言う。
にしてもさあ、普通は肩とか叩くんじゃあないの?まあ、そんな事されるのもごめんだけど。

「……何か用?」
「いや?ただ単に目の前に君がいたからやったまでだ」

「へえそう、随分暇なんだね。それじゃ」

「……どこへ行くんだ?」

「……ッ着いて来るな!!っていうか、それ君にカンケーないよね?」

「まあ関係無いな」

「なら聞かなくていいじゃんか。ほっとけよ」

「……その袋ビデオ屋の物だろう?返しに行くのか」

「だ、か、ら!!君にはカンケーないッ!おい!!!」

ひょいとぼくの手から袋を奪い取って中身を眺める。
目を細めて、珍しいな、と言った。

「…………何が」

「これが、だ。ハッピーエンドは嫌いだろう?」

「まーね。嫌いだけど、ただの気まぐれだよ」

「へえ。全部見たのか?」

「……一応ね」

「…………物語はつまらないが、途中のダンスシーンは中々気に入っている」

ダンスシーン?あったっけ、そんなの。雑誌読みながら流し見してたから、覚えてない。

「そうだっけ?」

「覚えていないのか」

「全く」

「…………女優のダンスする姿がな……ほんの少しだけ、お前に似ているんだ」

「……………………は」

顔を鏡で見たらものすごくマヌケな顔をしてると思う。
だって、そんな事言うなんて思うわないじゃないか普通。
ぼくに似てるって?だから?
バカじゃないの、だから気に入ってるって、そんなワケでもないのに。
何でこんなに顔が熱くなるのさ。バッカじゃないの。
じわじわと顔に集中してくる熱に気付かれたくなくて、帽子を深く被って歩き出す。

「ジョニィ」

「……何だよ」

「……さっき……本当は、お前がいたから追いかけた。」

ただ話がしたかった。そう言ってDioは着いて来るのをやめた。袋を手渡してぼくとは反対方向の道へ歩き出す。

「……っ」

意味わかんない、何なんだよ。ほんと言いたい事はたくさんあったけれどとりあえず、遠ざかる背中にバーカって叫んどいた。
Dioは振り返らずに手だけ振った。

DVDもう一回だけ見てみようかな、あいつが言ってたあのシーンちゃんと見てみたいんだ。
どれだけぼくに似てるか確かめる為にもね。似てなかったら明日文句言ってやるのさ。
文句を言った時のDioの顔を想像しながら、ぼくは夕焼けに背を向けた。



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