美しい君が欲しい
2012/10/01 01:57

□ディエ→→ジョニ

珍しい、と思った。
レースの各地に設けられたこの中継地点でジョニィ・ジョースターに会うなんて。
彼は木陰で無防備に寝ていた。
隣にはスローダンサーが主人に寄り添うようにしゃがみこんでいる。
いつも傍にいる相方は近くにいないようだ。
匂いすらしない。

(さて…どうしようか?)

殺してしまうなんて勿体無い事はしない。
何か嫌がらせでもしてやろうか。
コイツが一番嫌がること…

「……そうか。そういえばそうだったな」

ジョニィに近づき手袋を外すと無造作に地面に置いた。

淡い茶色の混ざったブロンドを撫でる。
少し癖のある髪の毛は木漏れ日にキラキラと反射していた。
毛先から頬を伝い唇に親指を押し当てる。
柔らかいそれは爪で少し引っ掻いただけで血が出てしまいそうだ。

(……女みたいだな)

ふっくらとした桜色の唇、長い睫毛、その瞼の下にはサファイアブルーの瞳が隠れている。
ガラス細工を触るように指を伝わせていく。

黙っていれば可愛いのに、そう思いながらサラサラと髪に触れているとぴくりと体が動く。
微かな吐息と一緒に漏れた寝言を俺は聞き逃さなかった。

「…んん…ジャイロ…」

その一言に何故だかとてつもなく腹がたった。
目の前にこの俺がいるのに、ジャイロ・ツェペリの名を呼ぶなんて。
空いている手でジョニィの顎を持ち上げ、頬に触れるだけのキスを落とす。

「……お前は俺だけを見てればいい」

他の物になんて目を向けるな、そう呟いて柔らかい唇に噛みついた。

――――

「…んぁ〜…」

夢を見た。
最ッ悪な夢を。

目を開けると木漏れ日がキラキラと眩しくて思わず顔を覆った。
ぐーっと伸びをして起き上がる。
隣にはスローダンサーが安らかに眠っていた。

「…昨日あんまり寝れなかったからなあ」

それにしても最低な夢だった、内容は覚えていないけど。
どんな夢だっただろう、と考えているとヴァルキリーの蹄の音が聞こえた。
数分もたたないうちにジャイロが帰ってくる。

「おかえりジャイロ」

「お〜…ってジョニィ、お前さん寝てたな?」

「えっなんでわかったの」

「寝起きの面してるぜぇ〜」

ニョホ、と笑いながらジャイロはヴァルキリーから降りてぼくに水を渡す。
ありがとう、と言って水に口をつけているとジャイロがぼくの顔をじっと見つめていた。

「……なに?」

「…ジョニィ口んとこ、傷ついてる」

さっきまで無かったよな?と言われ唇に触れると確かに血が滲んでいた。

「痛…ほんとだ…いつ怪我したんだろ」

「寝てる間に切ったんじゃあねえの?」

「…ん…」

どうしても納得できなかったけれど、そろそろ先に進もうぜ、というジャイロの言葉にぼくは出発準備を始めたのだった。



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