活動開始




新宿歌舞伎町一番街、昼間の静寂が嘘のように、人工的な光を伴ってけばけばしく輝く、夜の街だ。
平日とはいえ年の瀬迫った12月、寒さとアルコールで上気した顔で通りは溢れている。



整然とした、あるいは洗練された、という言葉の対極にある様相を呈しながら、街は躍動している。ネオンに彩られた街の足元では、暗褐色の防寒着に身をつつんだ一般人と、彼らを自らの巣に誘おうとする黒服たちがひっきりなしに行き交う。




乱立した雑居ビルが、主に彼らの巣だ。

闇の中で輝きを増す蛍光色の看板がいくつも連なっている。
せまい区画を上も下も余すところなく歓楽の色に染め上げようとするように、歌舞伎町では単独の店舗でなく、ひしめき合う雑居ビルの中に店を構えることがおおかった。




「club Red Ace」も、例に漏れずそのうちの一つである。

ひとつのフロアにつき2〜3の店舗が入る比較的広いビルの、その最上階である5階を丸々占領している。

雑然とした地上とは掛け離れた、豪華な内装と調度品、間接照明、そしてそれらに包まれるきらびやかに着飾った女性たちが、来る人を一瞬で別世界へと引きずり込む。




そうは言っても酒の入った席は外の喧騒をそのまま持ち込み、だがそれが一見似つかわしくない店内と不思議になじんでいる。

絵としたら、酔っ払いが高級レストランで女の子相手に騒ぎ立てているようなものなのに、なぜこの場所に来ると違和感がないのだろうと、毎晩、原田は店を見回しながら思う。



自分で店長を務めるこの店だけでなく、六本木にあるもう一つのキャバクラでも、歌舞伎町にあるホストクラブでも、同じように感じた。




そう鳴に言ったら、雅さんいっつも難しく考えすぎ、そんなのニセモノだからに決まってんじゃん、とずばり切り捨てられた。

そんな単純なもんかと反論しかけて、それが確かに真理だなと気づく。



豪華絢爛な内装も女の子も、言ってしまえばメッキみたいなもんだ。

一皮剥けば、ここは雑居ビルのワンフロアだし、ドレスを脱いだキャストたちは、学生だったりOLだったり主婦だったりする。

いかにそのメッキを、“それらしく“見せるかが大事なわけだ、と原田は思って店をつくるようになった。
…そのきっかけが鳴だとは、本人にも周りにも、言ったことはないけれど。


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店長のひとりごと。

…いつ稲実鳴受けパラレルになるんだこの話…!




10.02.09





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