グンナイ、ベイベー
深海に溺れる夢ばかり見るようになった。
見上げる先にはゆらゆら揺れる海面とその先にある光が映るばかりで、伸ばした手はどこにも届かず、周りを見渡せば見知らぬ生物や名も知らぬ海兵(だと思う)や人魚達がこちらを見るだけで助けてもくれず、どうしようかと光を見上げている間に息が切れ、ごぼりと口の中から空気の塊を吐き出したのを見つめながら意識を落とす。

「これってきっと君のせいだと思うんですよ」

雀ヶ森レンは目の前で紅茶を優雅に飲む蒼龍レオンへとぶすりとした表情で告げる。
そもそも、あんな夢を見るようになったのはアジアサーキッドの後に偶然出会う機会のあったレオンとヴァンガードファイトをした後からだ。深海の夢はアクアフォースのそして蒼龍の民の記憶に他ならないとレンは自分の中で結論付けている。
レオンもそれに対して特に反論も無いのか、ゆっくりとカップをソーサーに戻しながら「海兵ではない、海軍だ」とアメジストの瞳を鋭くさせるだけであったし、そもそもとレオンも鬱陶しそうに息を吐き出す。

「俺も先日から戦場に立ちすくむ夢ばかり見る」

なにかを探しているのか、進んでいるのかも分からずに戦場に立ち、時には走るその夢はどうにもはっきりとせず、周りに集まっている仲間であろう戦士たちもレオンを一瞥するだけで何も言わず通り過ぎ、レオンとしては寝覚めは最悪であった。
あれは、きっとレンのシャドウパラディンの夢だと、レオンもまた確信していた。
夢見の悪さ如きで体調に不調をきたすような生活はしていないが、決して楽しいものでもないのでレオンとしてもどうにかなるならばしたいのだが、とレンを見やれば、こちらの不満顔など眼中に無いのか、むしろその態度が気に食わないのかなんなのか、あからさまに頬を膨らませ、ぶすりと不機嫌をあらわにしていた。
不機嫌になりたいのはこちらも同じだというのに。

「君は良いじゃないですが、僕はもっと海の中を見たいのに息が切れて死んじゃうんですよ?」

つまらないじゃないですか、と大雑把に纏められた赤が揺れる。
レオンの頭は痛くなるばかりだ。


グンナイ、ベイベー
(おちるうみのこどもたち)


「知らん、そもそも俺は彼らの世界で息が出来なかったことなど無い」
「レオン君は魚だったんですね」
「違う」



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