約束をしたのだ、彼と。
誓いを立てたのだ、自分に。
覚悟を固めたのだ、剣に。
目の前の敵を薙ぎ倒しては目の前の景色を広げていく、そんな単調作業にも似た日々を繰り返しては眠りにつき、精神体であるというのにはっきりとした夢を見ては、また巡る朝と戦場に自分を奮い立たせる。繰り返しだった、際限なく湧いてくる敵に深く刃を突き付けて、暗闇を少しずつ晴らしていく。
暗闇だったのだ、それがブラスター・ダークには怖くて仕方がなかった。
彼は、暗闇を恐れる子供だった。
前が見えないと、先が見えないと、後ろにも、どこにも逃げることが出来ないのだと賢者の手を握ってその場に立ちすくんでしまった彼を自分たちは照らす術を持っていなかった。これがもしあの、勇気の剣であったのなら、そっとその手を取って光の指す方へと連れ出すこともできたのかもしれないが、ダークもカロンもジャベリンもフルバウもそんなことが出来るような立場ではなかったから。
彼が暗闇に紛れて泣いてはいないかと恐れた。
今の彼がそんなに弱い訳はないと分かっているのに、かれの傍には新しい仲間が付いていることも知っているのに、日に日に不安と恐怖が積もって、進まない戦況に苛立って、気づけば自分は剣を取っていた。
不安定さなんて気にはならない。吹いて消えるような強さなんて初めからいらない。
薙ぎ払った敵のその向こうに、いつかあの赤が広がってくれるのではないかとそれだけを希望に前へと進んだ。
あの優しく強く儚い魂の居場所は分かる。何故と黄金の騎士団達に問われたが、そんなことは当然であったし、理由をつけることの方が難しかった。それはブラスター・ソードも同じであったらしく彼は「優しい魂を追えば、彼がいる」とそう答えていた。
ダークは多くは語らなかったが、きっと言葉にすれば同じだ。
ただ、自分のこの魂と、彼の魂が、共鳴するかのように呼び合うから、あの日の誓いを叶えたいとひたすらに呼び合うから、分かるのだ。
「ダークは泣くように剣を振るうのだな」
「お前は呼び合うように剣を振るうのだな」
「彼が呼ぶからな」
「彼が探すからだ」
勇気の剣は持ち主に応えた、自分はひたすらに呼び合った。
見つける、見つけなくてはいけない。
彼と約束をし、自分に誓いを立て、剣に覚悟を固めた。あの別れの日からずっと。
彼等が探すというのならば、自分たちはそれに応えなくていけない。
漆黒の駿馬が駆け抜けるその横を走り抜け、眼前の敵を薙ぎ払い、大きくなる声に応える日々をあと何回繰り返せば、あの場所へ。
「みつけた」と夢の中で微笑む先導者の元へ、あと、どれだけ。
遥か遠く最も近く
(見つけてみせる、探してみせます)
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明けない夜を数えながら
どんなに未来が遠くても
どんなに遠く離れたって
僕らは
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「その日は近い」
「あの日は遠い」
「前へ進まなくては」
「後退は許されない」
別れの日から変わらないこの魂を、「ダークは馬鹿ですね」とそんな風に叱る彼を夢見るだけで、自分は少しだけ変わられたような気がするのだ。
「君は変わった」
「お前は変わらないな」
「嬉しく思うよ」
「ああ、俺もだ」
ソードの言葉も、今なら少しだけ素直に受け取ることが出来るようになったのだ。
没
なんか変態さんみたいだろ