途中だよ
ななさん、ななさん。機械音と子供の声が合わさったなんともいえない声が頭の中にくわんと響いて、優は仕方なく重たい瞼を押し上げた。「おはようさん」「うん、おはよう」嬉しそうな声が再度聞こえると同時にけたたましいアラームが響く。それに重なるように「切ってもええ?」と子供が言うので好きにしてくれとそのままベッドを後にした。
しかし、後ろで「忘れもん!わし!忘れとるよ!」と言うので仕方なく毛布に埋もれた彼を引き上げに戻り、台所の机に再度放置を決めた。

優の友人にとても頭の良い少年がいる。
彼がちょっとスマートフォンを改造したいというので貸し出した次の日にこの子供は優のスマートフォンに住み着いていた。友人をそのまま子供にしたようなその容姿に今と同じような年寄りのような話し方のギャップがなかなかに面白いこのプログラムは機械に疎い優の為にとつけてくれたものらしく、なにから何まで本当にお世話になっている。強いて言うなら独り言が増えてしまったことが難点だろうか。

「メールが3件届いとるね、1つはメルマガで2つは依頼じゃよ」
「後で読むよ」
「了解じゃ、今日の予定は特別なしかの」
「うん、お仕事日和だね」

うむ、満足そうな声と共にピリリと少しだけスムーズが鳴るのを「五月蝿いのぉ」とすぐさま止めて、プログラムの子供は黙り込む。恐らくスリープモードに勝手に入ったのだと思う。それでも名前を呼べばきっと出てきてくれるのだろうけど。

「おひる」

よんだかの?うん、、呼んだ。呼んだだけ。
製作者の友人の名前から思いつくままに名付けたその名前に、以前ほどの不機嫌さは感じられない声で返されるのがなんだか面白い。「そうけ」と再度静かになるその声もまた、音だとは分かっているけれど。

今日と言う日もまた、ほんのりと色がつき始めた、そんな気がした。





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