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言葉より息が詰まる




生温い湯が肌を滑る。
こんなに長く湯船に浸かるのはいつ振りだろうか。
後ろから抱きすくめてくる男は他に何をするでもなくただ浴槽に浮かぶ私の髪を弄んでいる。その指を見つめながら、絡まらないと良いのだけれど、なんてどこか他人事のようにぼんやりと思った。
いくら広いとはいっても個室の風呂に大の男二人が入ると些か窮屈だ。伸ばした脚がぶつかる度に水面に波がたつ。それからばしゃりとはねる音。顔にも容赦無く飛び散る湯に辟易しつつも、湯船を出ることはしなかった。
理由は自分でもよくわからない。ただ、密着する身体がどこか心地よかった。
湯の中で直に触れ合う体温は普段のそれとは違ってどこか柔らかい。荒々しい行為の中で感じるような不安感もなくて、本当に妙な気分だ。
彼も元から口数の多い方ではないけれど、今は言葉を交わす以上のやり取りが成り立っているような気すらした。

ーーきっとこの感情に名前はなくて、いい。



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