それはとある悲しい多重人格の観察日記。



シャーロットはおとなしい女の子。
レースとフリルが大好きで、内気なかわいらしい子。
シャインはおしゃべりで、気さくな女の子。
おしゃれさんで気位が高いけど、本当はさみしがり屋で、努力家。
シャルルは不思議な子。
あの子の視る世界はどこか遠く、なによりも儚い。
シャルロッテは優しい人。
一番の年長者で、気配り上手が彼女の美点。
シャーベットは人見知り。
でも、彼女以上に花や木に詳しい人を見たことがないくらい、博識な子。
シャングリラは、おかしな子。
彼女より変人で、彼女よりお菓子が大好きな人はいないだろう。そして彼女のお菓子はとてもおいしい。
シャロンは元気な人。
天真爛漫で底抜けに明るいのが、シャロンの魅力。
シャロエルはひきこもり。
博士気質で、ずっと研究ばかりしている、気ままで笑顔がやさしい女の子。
シャーベリアは策士でいたずらっ子。
可愛いけどあくどい悪戯が大好き、でもなぜか憎めない。
シャルロットは多重人格。
彼女は日ごと、新しく生まれる。

この日記は、そんな何人ものシャルロットの観察日記だ。


「おはよう。シャルロット。」

「…おはよう。あたしはシャインよ、学者さん。」

「そうか。悪かったねシャイン。今日もかい?」

「残念ながら今日もよ、今度はどんな子が生まれるやら。」

「それにしても、あたしが出るのは久しぶりねー、何かあったのかしら。」

「あの子に何もない日なんて存在しないと思うけどね。」

「そうね、日ごと人格が生まれるんだから。ああ、それにしても久しぶりに朝ご飯を食べるわね。あ、ご飯食べたらシャルロットと変わるから。」

「ああ、助かるよ。」

シャインはシャルロットの8人目の人格。
いまは何人いるのだか、見当もつかない。さて今度はどんな子が成形されるんだろう。
数時間後シャインはつぶやいた。

「ここはどこ?」

ああ、新しい子が生まれた、おめでとうシャルロット。

「おはよう、新しいシャルロット。」

「わ、わたしはシャンデルエよ。シャルロットってだあれ?」

「いいよ、後で説明するから。」

彼女がうなずいた途端、目つきが変わった。

「一番目のシャルロッテが死んだわ。」

「やあ、シャルロット。気分はどうだい。」

「かわいそうに、シャルロッテが死んじゃったの。かわいい子だったわ。」

「それはお気の毒に。」

「かわいそうな子。」

「君がね。」


こうして彼女は今日も生まれては死ぬ。


多重人格者の観察



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