優しい人は嫌いです。 あたしはその人のそばでは息ができなくなる。 だから貴方が大嫌いです。
だから貴方なんて死んじゃえ。
「…ごめん、」
嘘です。本当は大好きなのです。 だけど貴方を見ると、つい手が言うことを効かなくなっちゃうのよ。 勝手に。 貴方のせいだ。 嫌い。
「ごめ、ごめんなさい。」
泣かないで大好きなひと。あなたが泣くとあたしも悲しい。 だけどなぜか、貴方を見ると、見てしまうと、口角は邪悪に釣りあがる。 本当は慰めるための役割をもつ腕は、貴方を傷つけるものへと変わる。 それに、こんなに傷だらけになって。 一体誰が、こんなことをしたの? あたしの愛しの、かわいいかわいいこの人を。 こんなひどいことをする人なんて死んでしまえ。
「僕が、悪かったから、…痛い、よ。」
そうよ、貴方が全部悪いのよ。 貴方が他の人を見るから、あたしの手は貴方を叩き 貴方が他の人と話すから、あたしの足は貴方を蹴り 貴方が他の人に笑うから、あたしの瞳は貴方を睨む 全部全部、貴方が悪いのよ。 貴方がいけないのよ。
「だから、もう。」
そんなわけないわ。悪いのはすべてあたしなの。 あたしがすべていけないの。 あたしは、貴方にこんなことをした人を許せない。 あなたをこんなにした人を、殺さなきゃ。始末しなきゃ。 そうじゃないとあたしの可愛い人が傷付いてしまう。汚れてしまう。
死んじゃえ。
「…許して、くれ。」
だから次の日、あたしはビルから飛び降りた。
ごめんなさい、本当は大好きでした。
行き過ぎた愛情の結末。
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