い やだ、呟いたことはありませんか。
ささやかな祝福のように、ぽつりと。
誰にも気づかれないくらいに。
それは、たとえば、
辱しめを受けた時。
信じられない侮辱を受けた時。
悲しい言葉で貶されたとき。
大切な人が逝ってしまったとき。
あり得る筈のない現実に、出遭ってしまったとき。
誰にも信じてもらえない時。
云ったところでどうにもならないことは、分かっているのに。
どうにかして貰えるわけじゃない台詞なのに。
それは、もう、無意識に。
そう、ふとした瞬間、刹那に。
自分でも知らないうちに、漏れ出てきてしまった。
現れ出てきたしまった、本音
誰かが助けてくれるわけでもないことは、己が一番わかっているのに。
それでも、
まるで、言いなれた事実のように、すらすらと。
花弁から滴が伝い落ちるくらい、さりげなく。
い
や
だ
と
呟
い
た
こ
と
は
あ
り
ま
せ
ん
か
ねえ、本当は、在るのでしょう?
痛み(傷み)
back