降りしきる夜雨
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それは突然の夜雨だった。あいにく傘も持ってなく
『どっか雨宿り...』
雨で視界が悪くなってゆき、雨が強くなると共に気持ちも焦った。暗闇の中にOPENと書いてある建物が見えた。
確かあそこはバーだった気がする。入る機会がなく一度も行ったことがないけどどうしよう。そう思ったが悩む暇もなくかけ足で入った。
少し濡れてしまった髪をハンカチで拭き、一杯注文した。
いきおいで入ったお店だったけど、美味しいお酒だった。『また今度来てみようかな』そう考えながら店内を見回した時、一人の男性客に目を奪われた。
グラスに落とす視線、それを口付け飲む動作。すべてが素敵な人で。ふと気付けば彼と目が合っていた
「レディお一人かい?」
私がずっと見つめていた割に、突然話しかけられたことに驚いた。その驚きのあまり言葉が上手く出ず、ただ頷いた
「へぇ奇遇だね、俺も同じく一人なんだ。ねぇレディの今宵の時間、よかったら頂けないかな」
グラスに向けていたあの視線が私に。そう思ったら頭がいっぱいで。かろうじて返事した声もきっと間抜けだったと思う
椅子から立ち上がった彼はすらっとした足で身長も高く。着ていた高そうな服も、見事に着こなすという域を超え、彼が着るためにあるのではないかと思うくらい似合っていて。
口から放つ低音ボイスも、彼を一層引き立てていた。そんなことを頭の片隅で思っていた
「外に出ようか」そう言い私の肩に手をまわした
バーを出るとまだ雨が降りしきっていて
「いつもは少し歩いたりするんだけどね、雨も振ってるしタクシー乗ろうか」
普段からこういう事をしてるタイプなんだろう。夜雨の中を走るタクシーに乗りながらそう思ったけど、何故か嫌悪感はなかった
『あなたの名前は?』
俺?という顔をしたから、あなたしか居ないでしょ。と言ったら、ふふっそうだね。と彼は笑い、レン。と言った
たった二文字、なのに聞いた瞬間まるで魔法にかかった気分だった。
『レン...』
「うんそう。ねぇレディの名前は?」
だけど魔法だなんて可愛らしいものではなく。レンの声を聞く度に毒されるかの様で。そして私は自らその毒を飲み込んだ。
私はかかったフリをする。欲にまみれた二人が繋がるだけ。
突然振ってきたあの夜雨は、彼に毒される様、私を導く夜雨だったのかもしれない
2014/03/17 Mon.
一万打企画の2個目!
今回は、下書きで予定してた内容と全然違う内容になりました(笑)
しかも下書きで書いてた所を結構省いたり。
あともっと言うと、あーる15ぐらいの内容にしようか悩んでたのですが、辞めてしまい、そんな事にもならなく(笑)
なので予定と違う風になってしまい、うーん(笑)
予定は未定ですが、あーる15を付けて続編的なのを書くかもしれないです