◆届かない手紙
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プリンスの指名は無し。お好きなプリンスでどうぞ。
※ラスト注意※
この手紙はもうあの人に届きません
私の彼は今や人気アイドル
テレビをつければいつもそこにいる
彼がデビュー決定して東京へ行くとき
わたしは地元に残った
本当はついて行きたかったけど、
親にも心配をかけたくないなどの理由からの判断
見送る時には悲しい顔を見せたくなくて
あまり彼の顔を見れなかった
だけど別れ際に彼はわたしに言った
「手紙送って、待ってる」
『え、手紙...?』
「電話で声を聞くと仕事放り投げたくなるから。だから手紙待ってる」
伝えたいことが沢山ありすぎて
でも何通も送ると迷惑と思って上手くまとめようとした
書いては書き直す、その繰り返し
気がついたら手がかじかむ季節になってしまった
『はぁ、寒い』
寒さで冷える手で彼への手紙を書き、
やっと満足のいく文が書けた
早く手紙を届けないと
待たせ過ぎて怒られちゃうかな
上着を羽織りしっかり防寒して外に出た
『あぁ寒い寒い』
風も吹いていて尚更寒く感じる
向かい風に耐え、ポストの所へ来た
『よしっ、彼の所へ届けてください』
ポストに会釈をして手紙を入れようとしたその時、
びゅーっと強い風が吹いた
『わっ、手紙飛んじゃう!』
冬の風に煽られ、持っていた手紙が飛ばされた
待って、それはあの人に届けたい手紙なんだから。
一心不乱に追いかけた
『あっ、今のうちだ』
風が収まりかけて手紙は地面に落ちた
もう離さないぞ。と手紙を掴んだ
のが最後
ここは車道という事に気づいた時には手遅れ
いきなり車道へ突っ込んで来た私に、
車の運転手はブレーキをかける間もなくぶつかった
痛いとかもう感じなくて、周りの音すら聞こえなくなって
冬の風でまた飛んでゆく手紙を見たのが最後だった
この手紙はもうあの人に届きません
2013/11/19
意識してないのに丁度いい季節感 三┏ ( ・ω・ )┛
ラストのシーンをもっと細かいと言うか、
他の表現もしたかったのですが、病み系の小説に使おうとやめました
予定以上にしんみりでどうしようかと思った小説です