□第四章□
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このままこうしていれたらいいのに
そう思ったけど互いの唇が離れた
『にっ、苦い...』
「あははっ、第一声が苦いなの?」
『だってタバコを吸った直後ですよ』
「これが大人の味っていうやつだよ」
『いやいや単にタバコの味じゃないですか』
「へへ、でもこの味嫌い?」
『き、嫌いじゃないです』
「てか髪の毛濡れてるよね」
すくっと私の髪の毛に指を通す
『あっ、ごめんなさい服濡れますよね』
「なーに、お風呂上がりにテレビ観てたら我慢できなかったって感じ?」
『はい...』
私ってばお風呂上がりだったのに慌てて出てきたんだった
というか、
『私パジャマ姿だっ!』
髪の毛もそうだけどすっかり忘れてた
Tシャツのラフな姿だけども恥ずかしい
「風邪引くよ?僕ちんの上着貸すからほら」
『そんな、申し訳ないです』
「そういう時はありがとう。って言うんだよ、ほらっ」
ふわりと上着をかけてくれた
『ありがとうございます』
「うんっ」
『嶺二さんあれだけテレビ出てるのに今日もオフなんですか?』
「えっ、僕ー?テレビとかまとめて撮るからね。それに今日も買い物後に家で雑誌のコメント書いたりね」
そういうものなのか
仕事=テレビ局に行くだけじゃないもんね
「んー、それに最近は家でも出来る仕事をメインにしてるんだよねー」
『え?なんでですか?』
「ちょっと引っ越そうかと思ってね。
他にもあるけど家での用事が色々あってさ」
『えっ、嶺二さん引っ越しちゃうんですか』
そんな引っ越すだなんて
今までこうして会えてたのに
今後は会えなくなっちゃう
結構遠くへ越すのかな
「そんな悲しい顔しないでよ、テレビを観たら僕が居るからし。画面越しになるけど会えるからさっ」
『はい...』
「んっ、上着はまた今度とかでいいからねん、じゃあね」
上着借りちゃった
上着からは相変わらずタバコと柔軟剤の香りがした
暖かさも残っていて、まるで嶺二さんに抱きしめられてるみたいだった
また今度で。という事は次も会えるという事だよね
多忙や引越しのせいで、会えるのは画面越しだけにならなければ良いのだけど
そう考えてたらある疑問が湧いた
私と嶺二さんの関係って何だろう
キスをしたけども恋人なの?
行為に至らなかったからセフレ目的でも無さそうだし
でも恋人になれたら良いな。なんて
――――――
あれから何日か経った頃。
今日は休日だから嶺二さんに上着を返そうと歩いていた
こうして考えてみると連絡先も知らないや
近所の人に家の場所を尋ねる事も出来ないし
その時、あの柔軟剤の香りがした