□第三章□
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そしてあの後はそのまま別れて
当然母にはこっぴどく叱られた
ドキドキが収まらない私には説教中も
上の空だったけど
でも母に「服からタバコのニオイがするけど」と言われ驚いた
慌てて自分のニオイを嗅いだけど分からなかった
これじゃ寿さんと同じだ
『また会いたいな』
さっきまで会ってたのにそう思った
お風呂からあがり、テレビをつけた
“さて今日の特別ゲストはこの方っ!"
テレビからアナウンサーさんの軽快な声が聞こえる
他にも人気タレントが出てるみたいだけど
詳しくない私には分からなかった
けどこの特別ゲストの人は知ってた
というよりさっきまで
抱きしめられてたあの人
“寿嶺二さんでーす!"
「はーいっ、嶺ちゃんのご登場だよっ♪
よろしくマッチョッチョ♪」
一通り観客の笑いをとってから番組は
スタートした
美人アナウンサーさんが寿さんに質問し始める
アナウンサーさんは寿さんを見ていて、
寿さんもアナウンサーさんを見ている
二人は互いを見ていて
『質問コーナーだから互いを見るなんて当たり前でしょ』
そう思うけど耐えられない
アナウンサーさんに対する嫉妬心が止まらない
寿さんを見ないで
他の誰かを見つめないで
「ちょっと名前どこへ行くのっ!?」
母が止める声がしたけど構わず外へ駆け出した
―――――――――
『はぁっ、はぁっ』
初めて会ったあの場所へ来てみた
もしかしたらまた会えるかと思って
『いるわけ、ないか...』
あの時と同じ場所、同じくらいの時刻
だけど期待通りにはいかなかった
ふと冷静になってみたけど
ここら辺って人通りが少ないんだよね
おまけに街灯も少ないし早く帰ろう
来た道へ戻り始めた
『相変わらず真っ暗な道...』
やっと街灯が見えてきてホッとした
街灯で照らされた所をよく見てみると
「あれ、こんな時間にどうしたの?」
『こっ、寿さん何でここに!?』
「コラコラこんな時間に女の子が出歩いちゃいけないんだぞっ」
寿さんを探すために出てきたけど
諦めていただけに驚いた
相変わらず深く帽子を被り1人でタバコを吸っていて
テレビで観るより何倍も輝いている
『寿さんに会いたくて』
「えっ、僕ちんに?」
『さっきテレビをつけたら寿さんが映ってて。でもアナウンサーさんと喋ってるみてられなくて.....』
「それってどういう意味で受け取っていいのかな」
『えっと、それは..,』
寿さんはニヤリと笑い、そしてまだ吸えるタバコの火を消した
『えっ?』
可愛いなぁ。という言葉が聞こえ
私の口は、寿さんの唇で塞がれた
『んんっ』
口の中がタバコの味で苦くなっていく
『んん、はぁっ、んんっ』
「んっ...」
私の耳は寿さんの手で塞がれ、
視覚も聴覚も思考も、何もかも寿さんに支配された
『んんっ、寿..さんっ』
「名前で読んでよ。んっ、ほら」
『ふぁ、れい..じさん』
うん、いい子だ。そう言いキスをしたまま
私の頭を撫でた
キスだけで沢山なのに大きな手で
撫でられてドキドキしてる心臓がうるさい