□第二章□
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また会えたらと何日かあの場所へ行ってみたけど結局見つからず
人気アイドルだし忙しいよね
あれは一晩の奇跡だったんだ
と思ってたら
『なっ、なんでアイドルがスーパーの袋をぶら下げてるんです?!』
「あれ?またバレちゃった?」
学校から帰るなりお母さんに夕飯の追加買い出しに駆り出され
それで制服を着替える間もなくお使いへ行ってきたけど
アイドルの手には“スーパーへ行ってきました!"と言わんばかりな袋をぶら下げていた
「いやー、僕ちんってばアイドルのオーラ隠せないからね」
『いえ違いますから』
「へ?」
アイドルとは思えぬ何とも間抜けな声がした
『昨日と同じニオイがして』
「あっ、僕ちんの隠せないさわやかなイケメンのニオイ?」
このポジティブアイドルは一体何でしょうか
『違う、昨日と同じタバコのニオイがしたんです』
「ありゃりゃ、本当?」
クンカクンカと犬のように自分のニオイを確認しだした
「うーん、自分のニオイって分からないなあ」
『アイドルなのにタバコ吸うんですね』
「うん僕ちんは吸うよー。
でもこりゃイベント時にファン達に気づかれたらマズイなぁ」
いやいや、それもだけどスーパーで買い物もアウトでしょ
そう思ったけどキリがないので黙っていた
アイドルの素ってこんな感じなのかな
『じゃあ彼女は?居ないアピールしても実際は居ますよね』
「彼女?いないいないー」
『嘘だ、この間と今日でイメージが色々変わった気がする』
「まぁ僕もお仕事ですからねん」
そう言いタバコに火をつける
ていうか芸能人ってこんな時間にブラブラ歩いてるの?
そんな目で見ているのに気付いたのだろうか
「あっ、今日はオフだから!
しばらく缶詰め状態で数日のオフだったりね」
そういうものなのか
「名前ちゃんもお使い?」
『はい。...って何で私の名前知ってるんですか?!』
自分の事何も喋ってないのに
「この間学生証落としたでしょ?
その時バッチリ見ちゃったもんねっ」
ふふんっ♪と得意げな顔をする
「よぉーっし!そんなキミにお兄さんがアイスを奢ってあげよう!うん!」
返事を聞かずに私の手首を掴み歩きだした
こんなアイドルっぽくない彼に握られて
ドキドキしたなんてきっと気のせいだ
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ハーゲン〇ッツとか高いのダメだからね!
と言ってきたけと無視してそれより高いカップを選んだ
「うーん、公園でアイスを食べるのもいいねー」
そう言いコーンのついたソフトクリームを頬張る
頬張るものの口の周りにアイスが付き、ペロリと舌で舐める
やはり彼もアイドルな訳でそんな様も絵になる
「ねねっ、それ僕ちんにもちょーだいっ」
『え?あぁどうぞ』
持っていたアイスを渡した
だが彼は少し考え込んで
「どうせなら名前ちゃんに食べさせてもらいたいなあ」
何を言ってるのだろう
と思ったけど奢ってもらった身だし素直に応じた
『寿さんどうぞ』
「んっ」
スプーン伝いにくわえた振動が伝わり
少しびっくりして手を離しそうになった
だけども嶺二さんは私の手を掴んだ
「んー、美味しいねっ」
笑顔でそう言ってきたけども直視できなかった
「さてと、ってあっ!」
『え?』
「名前ちゃんもお使いだったんだよね」
『あっ、そういえば』
楽しくて忘れてたのだけど、私はお使いに来てたんだった
「めんごめんごっ!僕ちんのせいで遅くなったけど送ってあげれないんだ」
『いえ、こちらこそアイスごちそうさまです』
「だからお詫びにおいでっ!」
『へ?』
おいで。ってどこに?
と思ってたらまた彼から抱きしめられて
「お詫びのハグだよっ。ぎゅーっ」
相変わらずタバコのニオイがした
あと柔軟剤かな?癒される匂いがした
ドキドキしている自分に気づいて
抱きしめられながら『あぁ、好きになってしまったんだな』と1人思った