04


奇妙な体験を経て黄瀬と同居…もとい預かることになった俺達の生活はもう三日目だ。未だに戻る気配のない黄瀬に頭を抱えることがいくつかあった
一つは予想以上に甘えてくること。休みだから家にいることが多い俺の周りをずっとうろちょろしている。口を開けば抱っこ、とその短い腕を伸ばしてくるし、俺が外へ出かけようものなら遊びに行くっ、と足に抱き着いてくる
はっきり言って蹴り倒したくなる勢いだ。これが元の黄瀬なら確実に蹴り飛ばしている。それでも緑間や黒子あたりに任せたりしようと思わないのは俺が子供に甘いのかそれとも黄瀬だからなのか
まぁ、そんな訳で今は黄瀬の我が儘に付き合って公園に来ている。今の黄瀬にはなにもかもが新鮮に見えるらしく遊具にも林のような茂みにすら興奮気味に走る。一体何が楽しいのかわからん
早々に付き合いきれなくなった俺は黄瀬にあんま遠くに行くなよー、とベンチに座っている。駄目な兄ちゃんとか言われそうだ
ふぅ、と溜め息をつきながら公園を走り回って小さな子供と遊ぶ黄瀬を見る。小さい子供はすごい。話し始めていつの間にか友達になってる。すごいすごいと感心している俺に叱咤するようにそれは来た

「ぴぎゃぁあ――――っ!!!!」

「!?」

どっから出たのその声は、そうツッコミたくなる程の声。空気を切り裂くみたいな、言いすぎかもしれないがそれくらいの声量だ
しばらく放心してからはっとして声の方に向かう。近づくと膝の辺りに衝撃

「っおうふ!!!?」

「ふぇぇぇえんっ!!」

痛い。足元に抱き着いてぴぃぴぃ泣きわめく黄色。なんだ、何があったんだ。すぐに後ろから小さな男の子とそのお母さんらしき人が謝りながら来た。男の子が近寄ってくると黄瀬はやだぁぁっ、と悲鳴をあげてぎゅうぎゅうと足にしがみついてる。男の子をよく見ると泥だらけのその手にはうねうねと蠢く生き物。ミミズだ

「……お前ミミズ嫌いなのか?」

「〜〜っ、〜〜っ」

泣きすぎて声も出ないのかぐしぐしと俺の足に顔を埋めて首を縦に振る黄瀬。しゃくり上げながらぷるぷると震える黄瀬と目線を合わせて頭を撫でれば少しだけ泣き止んだ。ミミズを持っていた少年は泣いている黄瀬を見て最初こそオロオロしていたがまたミミズを持って近寄ってきた。ひっ、と引き攣ったような悲鳴をあげて黄瀬が俺のズボンを掴む。すると少年は傷ついたような顔をして、叫んだ

「ミミズくらいでなくなよ、よわむしっ!」

顔を歪めた少年はそう叫ぶと泣きながらお母さんらしき人のところへ走って行く。ぐすぐすと鼻を鳴らす我が子を見て苦笑するとぺこりと頭を下げて親子は帰った。日が沈みかけている公園はいつのまにか静かになって、暗くなるのも早いから帰るかと手を引こうとして気づく
目を見開いて放心状態の黄瀬。目は真ん丸に見開かれてからぎゅっと眉を寄せた。それからまた鼻を鳴らして泣き出すとそのまま後ろに倒れそうになって慌てて支える。真っ赤になった顔と荒くなった呼吸に額に手を当てる。熱い
苦しそうに顔を歪める小さい身体を抱き上げて家まで走った

馬鹿だな
(熱い身体を抱きしめながら)
(頭を抱えることがもう一つ出来た気がする)


(5/8)
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