03


あの後。見事な過保護っぷりを発揮した緑間がどんなに子供好きか良く分かった。だって一時間丸々コイツがどんなモノが好きとか暴力とか使うなよとか、敬語を使ったまま延々と聞かされた
もうなんて言うか緑間がオカンなのは良くわかった

「…おじゃましましゅ」

「おー、どうぞ」

拾ってきた犬みたいにきょどきょどと辺りを見回す黄瀬が本物の犬に見えたのは仕方ないと思う。舌の回らない喋り方も可愛いなとか考えてしまった頭をぶんぶんと振ってリビングに案内する。小さいくせに礼儀正しくてまたびっくりした
リビングに入ると黄瀬はソファに座ってやっぱり辺りをキョロキョロと見渡す。庶民の部屋はそんなに珍しいのだろうか。そんなことを考えていればくー、と音がした。黄瀬を見ると真っ赤な顔でお腹を押さえている。どうやらお腹が空いたらしい

「…ははっ、飯にするか」

「…!」

言った瞬間ぱあっと顔を明るくさせた黄瀬が可愛く見えた。子供をもった父親の気分なのだろうか、そんな年ではないが
晩飯は何にしようかと考えてから子供が一般的に好きであろうオムライスにした。すぐにつくれて腹持ちもいいし、ぴったりだ
早速とキッチンに向かえばとてとてとついてくる黄瀬。どうしてついて来るんだと振り返れば首を傾げて見上げられる。ああ可愛い

「黄瀬、向こうで座って待ってな」

「…はいっしゅ!」

さ行が言えないのか知らないが一々可愛い。おっといかん、相手は黄瀬だ。あの大型犬。そう自分に言い聞かせながらオムライスをつくっていく。一人暮らしも三年目。料理もかなり上達したと思う
お皿に乗せたオムライスをリビングに持って行くと黄瀬はつまらなそうに足をぷらぷらと揺らしていた。俺を見つけると黄瀬は顔を明るくさせてにこにこ笑いながら近寄ってきた。そんな純粋な顔で見上げないでほしい

「わー、オムライしゅ!」

「ぶっ!!」

オムライしゅって…。思わず吹き出すと黄瀬は不思議そうな顔で見上げてくる。なんでもないと言って食卓にお皿を乗せる。椅子に届かない黄瀬を抱き上げて座らせると目を輝かせて頂きましゅ!!と手を合わせた。あー、可愛い。子供を持った父親の気分だ、そんな歳じゃないが
ぱくぱく食べ進める黄瀬が喜ぶ度に心が満たされていくような感じがして無意識のうちに頬が緩んだ。こんなに嬉しい思いをしたのは久しぶりかもしれない

「ごちそうさまでしたぁ!!」

「お粗末様でした」

口の周りにケチャップをつけて嬉しそうに笑い手を合わせる黄瀬。ティッシュでそれを拭いてやるとくすぐったそうにまた笑う。小さい頃からよく笑うやつだな
皿をキッチンに持っていき洗い終わってリビングに戻るとやはり疲れていたのかうとうとと舟を漕いでいる黄瀬。仕方ないなと息を吐くと眠そうに目を擦る黄瀬を抱き上げて俺の部屋のベッドに寝かせる。すぐに目を閉じて寝息を立てる黄瀬に布団をかけて俺も横になればすぐに眠気が襲ってきた
おやすみなさい

(あ、風呂も歯磨きもしてないや)

(ま、いいか…)




(4/8)
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