「今、何っつった?」

「明日あの子の誕生日よって言ったのよ。知らなかったの?」

由花子が呆れて溜め息をつくと、億泰は弁解するように「だってよォ」と唇を尖らせた。

「アイツ、そんなこと一言も言わねーじゃんかよォ」

「本人から明日誕生日なのって言うようなタイプじゃないのよ。アンタ、解ってるんでしょうね?」

「いや、何だよ。解っとるわ!」

「ちゃんとプレゼント用意しなさいよ!ダッサイじゃらじゃらしたアクセサリーとか買うんじゃあないわよ?」

「ううううううるせー!」

図星だったのか億泰は慌てて由花子と別れてカメユーへ走った。


次の日の放課後、億泰は彼女のいる教室を覗くと帰り支度をしている彼女を見つけた。
「おーい」と呼べば「億泰くん、帰ろー!」と彼女から誘われて億泰は内心ほっとする。
二人並んで帰ることにも本人たちも周りも慣れてきた。
初めの頃は真面目な優等生の彼女と不良の億泰が話したり下校したりする姿に周りは絡まれてるのか?と変な心配もされたが、当の本人たちは至って純粋な交遊関係を育んでいる。
純粋どころか健全過ぎて最近では周りがやきもきすることか多く、昨日の由花子もその一人だ。

「ドゥ・マゴ寄ってくか?」

「あ、ごめんね。今日は早く帰ってきなさいって言われてるの……」

プレゼントを渡すタイミングが解らず億泰は寄り道に誘うが彼女は残念そうに断った。もしかしたら家族でお祝いするのかもしれない、と億泰は思い「じゃあまた今度な!」と笑う。
いつもと変わらず学校のことやスイーツの話をしていると、あっという間に分かれ道に着いた。

「じゃあ明日ね」

「おう……あのよォ……!」

別れて離れていく彼女の背中に億泰が声をかけて追いかけてくる。普段と様子の違う億泰に彼女は不思議そうに首を傾げた。

「億泰くん?」

「これ!ずっと渡そうと思ってたんだよ」

億泰がぺちゃんこの鞄からギンガムチェックの包装紙に包まれたプレゼントを彼女に差し出す。
勢いに押されて彼女はそれを受け取った。

「これなぁに?」

「家に帰ったら開けろよな!んじゃあよ!」

「えっ?億泰くん!?」

走り去ろうとする億泰の背中に今度は彼女が声をかけると、走りながら後ろを振り向いた億泰が叫ぶ。

「誕生日、おめでとうなーッ!」

「えっ!?あ、ありがとう!」

彼女が手を振ると億泰も照れ臭そうに笑って手を振り返す。その笑顔にきゅんときた彼女は咄嗟に受け取ったプレゼントで顔を覆った。
家に帰ったら開けろと言われたプレゼントを早く見たい彼女は急いで帰宅する。
自室で着替えるよりも先にプレゼントを開けてみると、ころんと小さなイヤリングが出てきた。

「かわいい」

制服姿のままだが鏡の前で着けてみると、小さな白い花が揺れる。
こんな可愛いものを億泰が買ったのかと思うとおかしいやら嬉しいやらでくすぐったい気分だ。
今度彼と出掛ける時に着けていこう。どんな顔をするかな?
そんなことを想像しながら彼女は鏡に映る自分に微笑んだ。

春はもうすぐ


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