愛したこともないくせに。
女と手を切る時には、大抵そんな事を言われた。
あなたって本当に誰かを愛した事ないんだわ。
私の事なんて少しも好きじゃあなかったでしょう。
似たような台詞を残して女は去っていく。俺は振り返らない女の後ろ姿を眺めながら煙草を吹かす。どの女も最後は俺の事など忘れたかのようにあっさりと過ぎ去っていく。それが俺には好ましかったし都合も良かった。
「酷い男ね」
「お前も俺から離れるつもりなんだろ」
「違うわ。あなたが私から離れるのよ」
「どう違うんだよ」
「あなたには一生分からないかもね、プロシュート」
「……最後に教えろよ」
「一生悩み続けるといいわ」
「酷ェ女だな」
「お互い様でしょ」
女は笑って、さようなら、と去っていく。やはり振り返らなかった。
大切なものは失ってから気付くものだ。
それを人は幸せと呼ぶらしい。
幸福アレルギー
いつまで経っても幸せに慣れない
※診断メーカーより