パッショーネの新しきボスとなったジョルノは多忙を極めている。“ジョジョ”としてイタリア中を席巻し、その勢いは今やイタリアの外まで及んでいる。
三時のティータイムにソファに並んでエスプレッソを飲むことすら久々な事で、余程疲れているのか珍しくジョルノが私の肩に頭を乗せてくる。
ちらりと横を見れば年相応の表情をしていて私はほっとした。もっと自分だけの時間を持って欲しいと願っても周囲がそうさせてくれない。

「明日どこか行こうか?」

「明日?」

「休みにしたんだ。最近君とデートらしいデートをしてなかったから」

「私の事なら気にしないで」

「僕がデートに誘っても、喜んでくれないの?」

「まさか。とても嬉しいわ」

甘く柔らかい微笑みで見つめあっていると、誰かがドアをノックしてジョルノを呼んだ。ジョルノはスッと私から離れて「どうぞ」と入室を許可した。ドアを開けて入ってきたのはミスタだった。

「……片付きましたか?」

「おう。今フーゴのヤツが後処理してる。それが終わったらジョルノの出番だ」

「……今夜?」

「恐らくな。遅くとも明日中にはカタがつくだろ」

「明日はダメだ。今日中に始末しろ」

「……Si,mio capo.」

ミスタは長居は無用とばかりに出ていった。

「久々のデートを不意にしたくなくて」

「……ボスとしての沽券に関わらない?」

「こんなことくらいで僕のボスとしての立場がどうこうなるような組織にしたつもりはないけれど……そうだな……。ボスとしての威厳や体面よりも君の恋人としての沽券は守りたいって男心を解ってくれる?」

ジョルノがフッと笑って、取った私の手の甲にキスを落とす。
先程の年相応な表情とはうって変わって、カリスマ性のある笑顔に私は必死で頷くのが精一杯だった。


ふたりには
同じ明日が来るよね


ワンライ「沽券」






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